篠崎愛は人類最強の地平に向かう? “無敵の可愛らしさ”を武器に実力派シンガーへ

篠崎愛、演技でも魅せる実力派シンガーへ

篠崎愛

 篠崎愛さんが仔リスのように愛くるしい顔とグラマラスな体でグラビアアイドルとして一世を風靡していた頃の写真を見ると、女性アイドルに全く興味を示さなかった友人女性が「篠崎愛ちゃんだけはものすごく可愛いと思う。私、もしあの子に何か頼まれたら絶対に断れない!」と断言したことを思い出します。食べることが大好きで、その食欲旺盛な姿をSNSの画像で思い切りさらけ出し、食欲に限らずあらゆる欲望をひた隠しにする息苦しいこの世界に、存在そのものでアンチテーゼを唱えている愛さん。

 先日訪れたインストアライブのトークで、さり気なく自分の二の腕をぷにぷにしながら「明日は名古屋なので美味しいものいっぱい食べてきます!」と話す姿を見ていたら、あの二の腕には人間の幸福の全てが詰まっている…!と思いました。

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 メジャーデビューシングル曲「口の悪い女」のMVでは、事務員・看護師・喫茶店員と様々な職業の地味な女性を愛さんが演じています。それぞれが簡単なコスプレではなく細かく作り込まれており(看護師姿は愛さんの歌唱力を世間に知らしめた某TVコマーシャルを連想させて懐かしさがありました)、白・黒・グレーを基調とした地味すぎるほど地味なファッションの「普通の」女性たちの衣装と、歌唱シーンの赤と黒の激しい色味で全身にレースが施された過剰に装飾的な衣装が対比になっていて、その女性たちが普段は押し殺しているドロドロした感情が歌によって一気に爆発する様が描かれています。

篠崎愛「口の悪い女」

 全人類がひれ伏す可愛さと圧倒的な肉体を持ちながら、そのビジュアルを封印した実験的MVや真っ白に覆われたCDジャケット(スマホ専用MV『LISTEN TO AI SHINOZAKI──私を、聴いて。』と1stアルバム『EAT 'EM AND SMILE』)で、観る者を挑発する愛さんに観客は完全にお預けを食らわされています。だからこそライブで御本尊を拝めた時の貴重さが増し、ただ二の腕の柔らかさが伝わってきただけで、その肉体が今ここにあることの尊さに拝みたくなるほどの有り難みを感じるのでした。

 グラビア専業だった頃からすでに歌唱力に定評をもち、新曲のMVでは女性の多面性を表情や仕草で繊細に表現して女優としての実力も感じさせ、その「無敵の可愛らしさ」に加えて更に数々の武器を携えた彼女は、人類最強の地平に向かっているのではないでしょうか。

■松村早希子
1982年東京生まれ東京育ち。この世のすべての美女が大好き。
ブログにて、アイドルのライブやイベントなどの感想を絵と文で書いています。
雑誌『TRASH-UP!!』にて「東京アイドル標本箱」連載中。
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