BLUE ENCOUNTのライブはなぜ感動するのか? Vo.田邊が生み出す“個”とのつながり
そしてこの春、彼らにとってはワンマンとはまた違った意味で、今の自分たちだからこそ実現した対バンツアー『TOUR2016 THANKS ~チケットとっとってっていっとったのになんでとっとらんかったとっていっとっと~』。バンド史上最長の全国36公演には3月から6月まで各地にSUPER BEAVER、アルカラ、LONGMAN、ヒトリエ、フレデリック、忘れらんねえよ、ircle、I-RabBits、クリープハイプ、サンボマスター、04 Limited Sazabys、ポタリ、キュウソネコカミ、9mm Parabellum Bullet、THE ORAL CIGARETTES、グッドモーニングアメリカ、TOTALFAT、Northern19、go!go!vanillas、Fear,and Loathing in Las Vegasという今のロックシーンの中軸を担う、ブルエンにとって先輩、同期、後輩が即答&快諾で共演。今のブルエンだからこそ叶ったツアーだった。
そして、その九州ツアーが始まる直前に彼らの地元、熊本を地震が襲う。開催を願うファンと開催に対してネガティブな意見もある中で、ギリギリの選択を迫られながらライブを実現。しかも地震の発生は最新シングル『だいじょうぶ』のレコーディング前日だったというのだから、心情的にも揺さぶられる部分は当然あっただろうし、物理的には制作とライブが並走していたわけで、一つのバンドが経験する事柄としては重すぎる事態が4月に集中していたことになる。
映像作品集の内容から一旦逸れたが、一連のヘビーな出来事、そして最長の対バンツアーを終えた先にあったのがワンマンでの追加公演だ。映像作品集には6月30日の超フルキャパの新木場STUDIO COAST公演が収録されているが、印象的なのはメンバー全員の笑顔だ。ここまで力みのないブルエンは初めて見た記憶がある。
長々と彼らのライブの演奏面以外のことに触れてきたが、実は映像作品集にはほぼ「熱く長いMC」は収録されていない。ただ、その前後に何があったのだろう? と思わせるファンの涙や、田邊以上に全力で歌うファンの姿が捉えられている。バンドの演奏そのものはストレートにドキュメントとして捉えられ、しかも12曲があっという間に終わってしまう。今、ブルエンのライブでスタメン起用されている楽曲と彼らの演奏の熱量だけを映像作品集に凝縮したことからは、彼らのそれらに対する自信がうかがえた。
そのライブ1本1本の全体像はこの映像ではわからない。だからこそ、未体験のリスナーにはなぜブルエンのライブが「暑苦しくも感動的」なのか自ら体験して欲しい。
■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Skream!」「NEXUS」「EMTG music」「ナタリー」などで執筆。音楽以外にも著名人のテーマ切りインタビューの編集や取材も行う。