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村尾泰郎の新譜キュレーション 第6回

デヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ……攻めの姿勢を貫いたベテラン勢の上半期5選

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岡村靖幸
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 今年の上半期の新作を振り返ると、ベテランたちの作品の充実ぶりが目立った。そのどれもが、これまで自分が追求してきたサウンドからさらに前進しようとしたり、自分の運命や閉塞した社会に果敢に挑もうとする攻めの姿勢に貫かれていた。やっぱり、ロックは転がり続けないとダメ。というわけで、そんなベテランたちの新作のなかでも特に印象に残った5作品を紹介したい。

 年明けに届いた突然の訃報。デヴィッド・ボウイの死は衝撃だった。その死の2日前、69歳の誕生日にリリースされたのが遺作となった新作『★』だ。鮮やかな復活を遂げた前作『ザ・ネクスト・デイ』のバンド・メンバーを一新。クロスオーバーな感覚を持った新世代のジャズ・ミュージシャンを従えて作り上げた『★』は、ロックな力強さと明快さを持った前作と対照的に、どこか危うげな緊張感に貫かれている。いきなり10分に及ぶタイトル曲から始まって、柔軟なバンド・サウンドが生み出すパワフルなグルーヴと、翳りを帯びた美しいメロディーが交差。そこにボウイらしい繊細でアーティスティックな美意識が浮かび上がってくる。リリース直前に行われた試聴会でこのアルバムを聴いた時は、ここからベルリン三部作のような新しいチャプターが始まるような予感がして興奮したが、〈その先〉を想像させずにはいられないアルバムを遺作として作り上げたボウイのアーティスト魂に胸を打たれた。

 そして、この『★』から2カ月後に発表されたのが、ボウイの盟友、イギー・ポップの『ポスト・ポップ・ディプレッション』だ。ジョシュ・ホーミ(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ)を中心にして、マット・ヘルダーズ(アークティック・モンキーズ)、ディーン・フォルティーク(デッド・ウェザー)といった腕利きメンバーが〈パンクのゴッドファーザー〉をサポートするバンドを結成。ホーミのプロデュースのもとで制作された本作は、ダークで不穏な空気に満ちていて、ずしりと重いグルーヴがボディブロウのようにじわじわと効いてくる。間違いなく、近年の彼の作品のなかではベストな仕上がりだ。ボウイとの蜜月期、ベルリン時代に発表した名作『イディオット』に通じるムードもあるが、『イディオット』はホーミのお気に入りでもあったらしい。ベルリン時代を回想する曲も収録されていたりして、ボウイの影を感じさせる作品だ。イギーは本作のリリース後、「これが最後のオリジナル・アルバムになる」という趣旨のコメントをしているが、ボウイ亡き今、イギーにはもう一踏ん張りしてほしいところ。

 80年代初頭から活動してきたUSアンダーグラウンド・シーンの帝王、スワンズも、新作『ザ・グローイング・マン』で一区切り。本作が現メンバーで制作する最後のアルバムになることを発表した。2010年に再結成して以来、新作を出すごとに高い評価を得て、ソニック・ユースと人気を二分していた80年代をしのぐ新たな黄金期を迎えていたスワンズ。『ザ・グローイング・マン』も近作同様、2枚組というヴォリュームで、ハードコア・パンクから民族音楽まで様々な音楽のるつぼとなったスケールの大きな音楽を展開。強靭な演奏から生み出されるカオティックな音の塊が、緻密に構成されたアンサンブルを呑み込んでいく。そんな、創造と破壊が凝縮されたような濃密な音響空間で、司祭のように君臨するマイケル・ジラの歌声の神々しいこと。新生スワンズの到達点ともいえる本作を経て、ジラの次のプロジェクトに期待したい。

      

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