ユニコーン、その特殊なバンド組織論ー-兵庫慎司が新アルバムから読み解く

ユニコーン、その特殊なバンド組織論

「べつに、昔からこうしたくてこうなったわけじゃないからなあ。これを理想として思い描いてたのが現実になって、俺たちすごいでしょ? っていうわけじゃないからね。だからべつに、これが理想のバンド像だとも思わないよ?たまたま俺らはこうなだけで。だからそう訊かれても、なんとも言えないよ」

 8月10日にニューアルバム『ゅ 13-14』が出るにあたって、何度かユニコーンにインタビューする機会があったのだが、その時に、ユニコーンがとても特殊な動き方をしているバンドであること、あとにも先にもほかにそんなバンドはいないことについて、何か思うことはありますか? と訊いた時の、奥田民生の答えである。

 もうちょっと詳しく書く。

 メンバー全員が詞曲を書き、全員が歌う。誰かが持ってきた曲に他のメンバーがあれやこれやと口を出し、手を入れてアレンジし、それによって誰が歌うのかとか、誰がどの楽器を演奏するかということまでが変わっていく。

 なので、曲を書いた人もその曲がどう仕上がるのかがまったくわからないし、ドラマーがドラムを叩いていない曲や(「僕等の旅路」)、ベーシストがベースを弾いていない曲や(「CRY」)、ギタリストがギターを弾かずにコーラスだけしている曲も(「風と太陽」)生まれることになる。

 総じて、作っているメンバー5人全員が、そのアルバムがどこに向かっているものなのか、何を目指しているのかが、わからない。普通もっとこう、メインのソングライターがいるとか、ボーカルはひとりだとか、バンドの中もしくは外にプロデューサーの役割をする人がいるとかいう状態で、目指すべき方向や目的があった上で、作品を作るものだ。

 こんなふうに音楽を作っているバンド、ほかに絶対いない、とまでは言い切れないが、かなりめずらしくはあると思う。自分たちがそんなバンドであることをどう思いますか? という質問に対し、奥田はそう答えた。

 そして、ABEDONはこうコメントした。

 ABEDON「意図が入るとおもしろくないんですよ、やっぱり。そういう表現をするということは、とっても大事だと思いますね。意図してないことを表現できるっていうのは、いちばんいいと思うな、俺はね。『これはこういうアルバムにしよう』とか言ってる時点でダメだね。なんていうの? あれですよ、公園と森の違いみたいな。森の方が好きなの。公園はあんまり好きじゃないってこと。だから森ですよ。公園を作ろうってしてないというか」

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