メレンゲ クボケンジがクラウドファンディングを選択した理由「歌モノのシーンを衰退させたくない」
歌モノのシーンを衰退させたくない。使命のようなものですね(笑)
ーークラウドファンディングの今後の可能性に関しては?
クボ:おそらく、これからもっと増えると思うんですよ。だって、今は音源を作るということにものすごくエネルギーがいるし、多くのバンドが普通に計算してほとんど回せていない状況ですからね。もちろん、経費をものすごく削減したり、いろんなところに頭を下げてお願いしたりすれば、できなくはないですけど。クラウドファンディングで資金を集めることができれば、少し安心して音楽制作に打ち込めるんじゃないかと。
ーーよく言われていることですが、もともと芸術っていうのはパトロンにお金を出資してもらって、それで作品を作っていたわけですからね。本来の形ではあるのかなと思います。海外では当たり前の状況になってきて、今後日本ではどうなっていくのかが注目されるところですよね。
クボ:そうですね。まだちょっと、閉鎖的な目で見られているのかもしれないですね。様子見しているバンドとか。
ーーAwesome City Clubや音速ライン、マイカ・ルブテなど、最近は徐々に若手のミュージシャンも活用するようになってきました。そうするとまた、色んなシーンが生まれてくるのかなと。せっかくこういう形で集めた資金なのですから、既製品ではできないようなユニークな作品を作ってくれたら嬉しいです。
クボ:どこまでできるかわからないですけど、今回は自分が好きな人と一緒にやりたいですね。今は、デザイナーさんと色々打ち合わせをしているところです。「せっかく自由にやれるなら、こういうことをしたいね」なんて、アイデアを出し合っています。
ーー例えばクラムボンは、新作『モメントe.p.』を販売してくれるお店を募集し、全国の雑貨屋さんやカフェ、アパレルショップなどで委託販売をおこなっています。これって、一つ先の形態だなと思うんですよね。大きな流通会社は通していないけど、結果的に全国展開が出来ている。そういうことは考えていますか?
クボ:そうですね、販売形態についても今は色々考えているところです。僕たちだけの力で、どこまで出来るかわからないけど。
ーーきっと、こうして一歩踏み出したことで、また見える景色も変わってきて、さらなる新しい展開につながっていくでしょうね。
クボ:そう思います。やはりミュージシャンとしては、いくらライブが大事とはいえ音源は作りたいんですよ。それをどう届けるかはきっとどんどん変わっていくでしょうね。もはやCDデッキを持っていない人もいるわけですし。ツールにはこだわっちゃいけないのかなと。
ーー今日はクボさんと前向きなお話がたくさんできてよかったです。今後の展望を最後に聞かせてもらえますか?
クボ:今回はソロプロジェクトなんですけど、だからといってメレンゲの活動をしないというわけでは決してなくて。ステイトメントにも書きましたが、メレンゲを続けたいがためのプロジェクトでもあるんですね。とにかく来年は15周年ですし、何か大きなことはしたいとスタッフやメンバーとも話しています。今回のプロジェクトがうまくいけば、メレンゲにもつなげていけるだろうし、さっき言ったように、自分のレーベルで後進を育てたいという気持ちもあります。とにかく、歌モノのシーンを衰退させたくない。これはもう、使命のようなものですね(笑)。
(取材・文=黒田隆憲/写真=池田真理)