メタルフェスはなぜ欧州で大人気なのか? 出演果たしたドラマーが現地レポート
少し話は変わるのだが、海外のフェスに出演したりすると必ず訊かれることがある。それはギャラなどの金銭面だ。これに関しては、プロモーターとしてYama氏が以下のように語ってくれた。
「フェスに出演している全てのアーティストがギャラを得ているわけじゃない。アーティストはだいたい3つの区分に別れる。ギャラの出るヘッドライナークラス、ノーギャラだけど、ケアはあるサポートアクトクラス、地元バンドや逆に出演料を払ってステージに立つプロモーションアクトだ。こうしてプロモーションアクトから得た金をヘッドライナーのギャラに回す事が多いんだ」
よく誤解されるのが、出演アーティストは全てギャラをもらっているのではないか、ということだ。これは大きな誤りで、Yama氏の言葉通り、ギャラがもらえるのはヘッドライナークラスのアーティストだけということになる。また、同氏は以下のように続けた。
「海外のフェスは規模が大きいとはいえ、その分会場費や運営費、人件費等が莫大になり、ファンからの入場料で全ての収益を賄うことはとてもできない。結局のところ運営の要は日本と同じでスポンサーを付け、できるだけスタッフはボランティアの力を借り、地元の活性化という名目で会場費を安く抑えるなど経費は極力抑えていくことなんだ」
フェスによって多少の違いはあるだろうが、こういった事情もあり、全てのアーティストがギャラをもらっているということはなさそうだ。
また、次によく訊かれるのがどうやって海外のフェスに出るのかということだ。そんな方法があるのであれば、ぜひとも知りたいというバンドはたくさんいるだろう。もちろん筆者だって知りたい。ただ経験上言えることは、日本のバンドが海外に出る最大の障壁は、恐らく言葉だ。言葉の壁があるせいで、積極的に動けないアーティストが実に多い。だが実際は言葉の壁は大きいようで、意外となんとかなったりする。
というのもヨーロッパのフェスに出ているビッグネームのバンドも母国が英語でなければ、つたない英語でなんとかMCをしていたりする。実際に海外のレーベルとメルのやり取りをしてみると、学校で習ったような理路整然とした文法ではなくて、日本人の英語力と比べてみても適当だったりする。当然、全てが当てはまるとは言えないが、大切なことは、まずはレーベルやプロダクション、好きなバンドでも構わない、それぞれつながりを持ちたい対象に直接連絡をしてみることだ。誰でも思いつくようなことであるが、これが最も大切なことではないだろうか。
このことについてYama氏は出演方法について明確な表現は避けたが、以下のようなヒントをくれた。
「自分から待っていてもこの世界で棚ぼたは絶対にありえないと考えたほうがいい。損して得取れという感じで、ギブアンドテイクを意識しながらまずは自分から積極的に力を持っている人に近づいて自分達のPRをとにかく頑張ることだ」
ドキュメンタリー映画『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』『グローバル・メタル』で世界中のメタルにスポットが当てられて様々な考察がされたが、個人的にはメタルというのはニッチなジャンルであるがゆえに、流行に左右されないものだと考えている。もちろん時代の流れによる変化というものは存在するだろうが、メタルの根幹というものは変わっていない。日本の演歌のように、ある種の伝統芸な一面があり、その不変さを持つがゆえ、ニッチとは言え世界中に広まり、愛されているジャンルなのだと思う。
いまは海外のフェスに参加するツアーがあったり、チケットがネットで簡単に購入可能だったりするので、ファンとしてならばその気さえあれば、現地まで行くハードルはかなり下がっている。実際に参加してみないと分からない空気感というのがどうしても存在してしまうので、まずは行ってみることをおすすめする。必ず自分なりに日本とは異なる点が見えてくるだろう。それが、ミュージシャンであれば新しいキャリアの道に、リスナーであればHR/HMというジャンルの新たな側面の発見に、つながるかもしれない。
(写真:Tons of RockのFacebookより引用)
■Leone Wakiya
Screaming Symphony、Ethereal Sinでドラムを担当。その他参加バンド多数。AHEAD Drum Sticksのエンドーサーでもある。