15thシングル『アンテナラスト』インタビュー
“言葉”で若者たちを涙させた新曲が最大ヒット、10-FEET・TAKUMAが誕生秘話語る
「出来る限り時間と情熱と言葉を使って周りの人に伝えていく」
ーーTAKUMAさんにとって、曲を作る、というのはどのような行為なんですか?
TAKUMA:曲を作る中で一番楽しいのは、ネタを思いついて、こんな感じの曲ええんちゃう? って、自宅でドラムを打ち込んでギター弾いてベース弾いてなんとなくの歌を歌った瞬間なんですよ。ゼロから1が生まれる瞬間なんで。あの時の「うわ、すごいの出来たかも!」っていう気持ちが楽しくてやってるんやと思います。それで、その時に歌いたいことがあるというのが最もやりがいを感じるんですよ。逆に一番しんどいな、大変やなと感じるのは、僕が抱いてる最初の「うお!」っていう感覚をメンバーやスタッフに伝えて自分の気持ちとシンクロしてもらうまでの説明であったり、演奏して波長を合わせたりする部分なんですよ。時には説得する時もありますし。でもそれもこれも、自分の伝え方ひとつというか。たとえば自分のやりたいことを自分の音楽欲のままに「俺はこれをやりたいねん!」ってだけ言っても前に進まないと思うんですよね。本心としてはそういうふうに正直に伝えたいですけど、やっぱりチームでやってるんで、みんな違う人間なんでね、僕が僕の感じるままに言っても通じないですし、みんなが感じられる部分で伝えていくことがすごい大切やなと感じていますね。最近ね、バンド仲間とか作家さんとかとこういう話はよくするんですけど。やっぱり自分だけでは何もできないですから。メンバーやスタッフあっての自分やし、そしてその一丸となった熱が小売店の人やメディアの人につながって、聴いてくれるみんなに伝わると思うし。そうじゃないと、音楽をリリースすることって、なかなか成功まで辿り着けないと思うんですよね。
ーーその、コミュニケーションの様を含めての曲作りだと。
TAKUMA:はい。それを凌駕するほどの才能や突出したセンスのある人は、そういう説明とかやり取りなしでも周りの人が勝手に心酔して通訳してくれると思うんですけど。もっと言うと、スタッフの人たちやレコード会社の人たちが自分たちの音楽を嫌いであったりとか、タイプでなかったとしても「ええやんこれ!」と思ってもらえるような伝え方とか熱、コミュニケーションが必要なんじゃないかと僕は思うんですよ。なんでかって言うとやっぱり、ライブ会場に来てくれる人たちにその音源を伝えるのが最重要目的にして最終目的やから、そこに向かって一直線に行くってことは、最短ルートを行くってこととはまた違うと思うんですよ。やっぱり出来る限り時間と情熱と言葉を使って周りの人に伝えていくことが大事やと思うし、時にはその人の好みとか思ってることじゃないところで、それでも「よしやろう!」って思ってもらえるような伝え方をしなくちゃいけない。
ーーそれって、社会のどこでも通用する話ですよね。
TAKUMA:どこでも言えることやと思います。でもそれが成り立つには、これは絶対いけるという確信とかイメージ、ビジョンが下っ腹にないと、伝える時に気弱になったり、自信がなかったりしてしまうと思うんです。やっぱり出来たものに宿ってる確信の濃さとか重さによって、そういった説明っていうのは違ってくるんですよね。だから僕も自信がない時はたじろいでしまうし。でも今回はそういうことが一切なかったですね。
ーーうーん、刺さりますね。
TAKUMA:ロックっていうテーマで今の話を聞いたら、「カッコわりーよ」って言う人もいるとは思うんですけどね。説明なんかダセーよって。でも伝えることって曲を聴いてもらうのと同じことというか、ただそれを言葉でやってるってだけなんですよね。だからガッて演奏して聴いてもらうことと、それを言葉で伝えることと、僕は同じくらい熱のあることやと思ってるんです。そしてそれがまず最初にすべきことなんやと思ってる。だからやっとCDを出せるとか、レーベルと話が出来るっていうとこまで行った若い子たちが、そこの努力をやらずに、チャンスを棒に振らないで欲しいと思ってる。そういうこともおもしろいと思ってやって欲しい。
ーーいや、それ、めちゃくちゃロックじゃないですか!
TAKUMA:(笑)。もちろん、俺は絶対こうなんや! って自分を貫き通して成功をつかむ人もいるから、必ず周りに言葉で伝えろってことではないんですけどね。ただ、やれることは全部やって、チャンスを逃して欲しくないんです。オッサンみたいなこと言ってますけど(笑)。
ーー若い頃は勢いこそがロックだと思ってましたが、努力することのほうがロックだなと、今改めて感じます。
TAKUMA:20代のやつらから見たら40代になった僕らなんて、もう2回くらい終わってると思われてもおかしないような年齢なわけでしょ(笑)。そういうやつらを見てて、あー俺らもこんくらい向こう見ずやったなあとか思うんですよね。そういうやつらと一緒のステージに立ってやれてるっていうのがめっちゃ嬉しいんですよ。それで、オッサンになるのも悪くないって二十歳そこそこの若い連中に思わせたら、また新しい感動があると思うんですよね。