20周年のフジロック、必見の洋楽アクトは? 小野島大が50組を徹底解説
7月24日
<GREEN STAGE>
RED HOT CHILI PEPPERS
嵐の中の開催となった第一回フジロックで初日のトリを飾ったレッチリが、第20回を迎えた今年のフジでもトリを飾ります。発売されたばかりの新作『ザ・ゲッタウエイ』は、長年のパートナー、リック・ルービンを離れデンジャーマウスをプロデュースに、ナイジェル・ゴッドリッヂをミックス・エンジニアに迎えた勝負作。かってなく密室的で抑制の効いた音作りは新鮮で、このバンドが新局面に突入したことを示す傑作でした。このアルバムがはたしてライヴでどう展開されるのか。世界中が注目しています。
BEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALS
ジ・イノセント・クリミナルズ名義では9年振りとなる新作『コール・イット・ワット・イット・イズ』をリリースしたばかりのベン・ハーパー。これが出演3度目とは思えないぐらい「常連感」があるのは、彼の音楽が苗場の空気に馴染むから。今回もソウル、ファンク、ブルース、レゲエ、ヒップホップなどがミクスチャーした抜群のグルーヴで魅了してくれるはず。
STEREOPHONICS
もはやウェールズの英雄ステレオフォニックスは、なんと15年ぶりのフジ出演。昨年発表の最新作『キープ・ザ・ヴィレッジ・アライヴ』を引っさげての凱旋です。新作は久々に彼ららしいけれんみのない正統派のロック・アルバムだっただけに期待大ですね。
2CELLOS
2人のチェロ奏者がやっているから2チェロズ。クロアチア出身の2人による異色のロック・バンドです。何度も来日していますが、フジはこれが初めて。いろんなロック名曲をカヴァーしていますが、当日はやはりこれを期待したいところ。
<WHITE STAGE>
BATTLES
4年ぶり新作『La Di Da Di』をリリースして絶好調のバトルス。フジ出演は5年ぶりですが、個人的にはやはり『ミラード』リリース直後、入場制限も出た07年のホワイト・ステージでのライヴが忘れられないところ。昨年の単独来日公演で、腰を抜かしそうなほどの壮絶な演奏を体験してはいるものの、やはりフジではそれ以上のマジックを期待したいところです。
Explosions In The Sky
ポスト・ロック系が充実している今年のフジロック。4年ぶりのフジ出演となるこの人たちにも大期待。5年ぶり新作『The Wildrness』は壮絶な傑作。この分野の極北と言えるほどの絶対零度の美しさを誇る作品だけに、ライヴは大期待です。入場制限必至のBABYMETALのあとという時間帯ですが、満員のフロアで迎えましょう。
ROBERT GLASPER EXPERIMENT
もはや説明するまでもない新世代ジャズの旗頭。マイルス・デヴィスの作品を大胆に改編した賛否両論の話題作『エブリシングス・ビューティフル』を引っさげての登場ですが、おそらくメニューは代表曲を網羅したフェス仕様と予想します。新作は(それがこの人の持ち味ですが)ちょっと洗練されすぎな感があったので、ライヴならではの激しく荒々しい展開を期待しましょう。
それにしてもロバグラとエクスプロージョン・イン・ザ・スカイの間にBABYMETALをぶっ込んでくるフジロックのブッキング恐るべしです。
DEAFHEAVEN
私が今年のフジロックでもっとも楽しみにしてるのがこの人たち。米西海岸出身のヘヴィ・メタル・バンドですが、ブラック・メタルとスクリーモとシューゲイザーとポスト・ロックの中間に位置するような特異な音像が最大の個性。ヘヴィでブルータルで強迫的な部分と、繊細で叙情的で美しい部分が極端な形で同居し、光と影が織りなす劇的でエモーショナルな世界を形作っています。私の個人的な感想を言えば「メタルになったゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー、もしくはモグワイ」というもの。これまで小規模な日本ツアーはやっていますが、フジロック出演は初めて。3作目にあたるニュー・アルバム『絶海』を引っさげての、待ちに待った登場です。凄いですよ。早い時間ですが絶対お見逃しなく。
<Red Marquee>
YEARS & YEARS
昨年ファースト・アルバム『コミュ二オン』をリリースしたばかりの英国発のエレクトロ3人組が早くもレッドのトリに抜擢。ポップでキャッチーなメロディと優しく心地よいシンセの音色、陰りを帯びたメランコリックなムードがあいまった良質なシンセ・ポップです。CDは若さに似合わぬ完成度の高さですが、ライヴは若さ剥き出しで迫ります。
JACK GARRATT
これまた今年ファースト・アルバムを出したばかりの若手ですが、英国メディアはこぞって大絶賛。エモーショナルで強い歌をうたうスケールの大きなシンガー・ソングライターでありながら、ベース・ミュージック以降の音響感覚や最近のインディR&Bに至るコンテンポラリーなサウンド・センスを融合した清新にして完成度の高い音楽性は、ジェイムス・ブレイクのデビュー時に匹敵する大物感を漂わせています。熊みたいなひげもじゃのルックスがご愛敬です。
THE AVALANCHES
なんと16年ぶりのセカンド・アルバム『ワイルドフラワー』をリリースしていきなり復活してしまったアヴァランチーズ。サンプリングとカットアップ・エディットという90年代の情報万能主義の象徴のようなファースト・アルバムからどんな変化があるかと思えば、驚いたことにほとんど変わっていない。しかしそれでいて2016年の今もピカピカの最新型ポップとして鳴っている不思議。いや、「最新型」は言い過ぎですが、この沸き立つようなフレッシュなポップ感覚は、何か忘れていたものを思い起こさせる力があります。現在の欧米を代表する若手がずらりと並ぶこの日のレッド・マーキーで彼らはどんな世界を見せてくれるか。楽しみでなりません。
TROYE SIVAN
南アフリカ出身、オーストラリア育ち。幼いころから子役として活躍、ショウビズの世界で感性を研ぎ澄ませてきたトロイ・シヴァン。甘いルックスと感性鋭いクールなサウンド、メランコリックでエモーショナルなメロディ、ソウルフルなヴォーカルと、走攻守何拍子も揃った非の打ち所のない有望な新人の登場です。これでライヴまで完璧ならまさに大物ですが、さて。
DMA'S
オーストラリア出身の3人組。これまた今年になってファースト・アルバム『ヒルズ・エンド』をリリースしたばかりの若いバンドです。ブリットポップ全盛期を思わせる陰りを帯びたおおらかなメロディと繊細なギター・ポップ・サウンドは、ツボにハマる人も多いでしょう。
<Field of Heaven>
KAMASI WASHINGTON
ケンドリック・ラマーの大傑作『To Pimp A Butterfly』への参加でポップ・ミュージックのフィールドでも一躍その名を知られるようになった現代ジャズの最重要人物です。昨年リリースされた2枚組アルバム『THE EPIC』は大きな話題になりました。現代のファラオ・サンダーズ的なイマジネイティヴでスピリチュアルでエネルギッシュなプレイは必見です。
ERNEST RANGLIN & FRIENDS
当年とって84歳! リー・ペリーよりもさらにレジェンドな、まさにジャマイカ音楽の父と言える偉大なギタリスト。今年を最後にツアー生活からの引退を宣言しており、これが最後の日本公演となる可能性が高いようです。ワビサビの極致のようなアーネスト翁のプレイ。見逃せません。
LEON BRIDGES
サム・クックの再来という惹句はちょっとおおげさかなと思いますが、レトロスペクティヴなクラシック・ソウル・スタイルがむしろ新鮮なレオン・ブリッジズの音楽は、フィールド・オブ・へヴンの空気感にぴったりでしょう。レオンのヴォーカルは良くも悪くも若さを感じさせるもので、先人の領域にはまだまだかなと思いますが、その分ライヴは若さのエネルギーを感じさせて楽しそう、歳をとって渋みと年輪を重ねた将来がとても楽しみです。
(写真=宇宙大使☆スター)
■小野島大
音楽評論家。 時々DJ。『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』などに執筆。著編書に『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)、『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)、『フィッシュマンズ全書』(小学館)『音楽配信はどこに向かう?』(インプレス)など。facebook/Twitter
■ライブ情報
『FUJI ROCK FESTIVAL 2016』
日時:7月22日(金)、23日(土)、24日(日)
場所:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
http://www.fujirockfestival.com