「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第27回 『寺嶋由芙 Solo Live 2016 〜わたしになる〜』
寺嶋由芙の努力はついに結実したーー25歳生誕ライブで起きた“ちょっとした奇跡”について
そして、MCで寺嶋由芙が「みんながまだまだ好きがはじまってくれるようにね!」と言うと、背後の幕が開いてバンドが登場した。2015年2月8日に渋谷WWWで開催されたファースト・ワンマンライブ『Yufu Terashima 1st Solo Live 「#Yufu Flight」』以来となるバンド「I wanna be your cat」の登場だ。ギターは岡愛子(BimBamBoom、くらしたち)、ベースはなかむらしょーこ、ドラムはU(U sus U、サンナナニ)、キーボードはrionosという女性のみによる編成。最初に演奏されたミナミトモヤ作詞作曲編曲の「好きがはじまる」は、2013年10月22日のステージで歌われた1曲でもあり、彼女の復活に合わせて書かれた<今度は どこにも 行かないから>という歌詞を、ゆふぃすとも一緒に歌うアンセムである。
MCで寺嶋由芙がI wanna be your catのメンバーを紹介すると、rionosで推しジャンが発生し、「私のときは推しジャンとかしないくせにさ!」と寺嶋由芙がふてくされてみせる一幕も。続く「初恋のシルエット」「恋人だったの」では、寺嶋由芙のかつてより丁寧な歌唱が印象的だった。
そして、MCではファースト・アルバムのリリースが9月21日に決定したことが発表された。寺嶋由芙は、自身の環境がこれまで変化してきたことに触れつつ、前に進んで行きたいと述べて、深く頭を下げた。
それに続いて歌われたアルバム収録予定曲にしてリード・ナンバーの「わたしになる」は、そうした過去のすべてを踏まえたかのような楽曲だ。作詞は、寺嶋由芙が敬愛する歌人にして作家の加藤千恵。作編曲は、フィロソフィーのダンスにソウル色の強い楽曲群を提供している宮野弦士だ。彼は、寺嶋由芙のディレクターである加茂啓太郎に発掘された、若干22歳の俊英である。そして、加藤千恵による<目に見える 手で触れてるものを 強く信じていたい / 甘いままでいい 私になるこのまま>という歌詞は、新たなアンセムになる予感に満ちている。この日の「わたしになる」にも、私は心ひそかに喝采を送っていた。最高だ、と。
本編ラストは、ミナミトモヤ作詞作曲編曲の「好きがこぼれる」。バンドで演奏されるのにふさわしいロック・ナンバーだ。終盤、寺嶋由芙がゆふぃすとの手に触れていき、「嬉しかった!」と言った声が耳に残った。
アンコールの前に、まずステージ上で映像がスタート。寺嶋由芙の出身地である千葉県のチーバくんを筆頭に、全国のゆるキャラから誕生日を祝うメッセージが紹介された。
そして、ゆふぃすとがピンクのサイリウムを振り、巨大な「だいふく」(寺嶋由芙の描いたキャラクターである)のフラッグをフロアで広げる中、寺嶋由芙はディアステージの制服で登場。そして、「寺嶋由芙 with ゆるっふぃ〜ず」から、7体のゆるキャラをステージに呼び込んだ。この日駆けつけたのは、ちょうせい豆乳くん、みっけちゃん、ササダンゴン、有明ガタゴロウ、ペッカリー、カパル、オカザえもんだ。
そして、アンコールで最初に歌われたのは、アルバム収録予定曲の「ゆるキャラ舞踏会」。作詞を担当しているのは、なんと寺嶋由芙と「みうらじゅん&安齋肇のゆるキャラに負けない!」で共演しているみうらじゅんだ。rionosが作編曲を担当した「ゆるキャラ舞踏会」はディズニー・ソングをも連想させ、加茂啓太郎が本気で制作したノベルティ・ソングだとも感じる。
なお、「ゆるキャラ舞踏会」では、ちょうせい豆乳くんが自分の顔面を外して最前列のゆふぃすとに渡すシーンも。すると、いつの間にか一番後方の関係者ゾーンに顔面があり、そこからステージまでゆふぃすとによって手渡されていった。まるでフロアを顔面だけがダイヴしているかのような光景だった。
続けて「いやはや ふぃ〜りんぐ」「ぼくらの日曜日」を歌った後、マイクを振られた有明ガタゴロウが「もう1曲やるでしょ?」とダブルアコールをバラす展開も。