a crowd of rebellionが見据える、音楽シーンの革新「ラウドとJ-POPを繋ぐトンネルになりたい」

a crowd of rebellionが目指す自由な音楽

160622_acor_2.jpg

 

「多方面にトゲが出ているアルバム」(小林亮輔)

――a crowd of rebellionではドラマーの高いスキルや、引き出しの多さも要求されるのではと思いますが、近藤さんはいかがですか。

近藤岳(以下、近藤):僕はメンバーからはデスメタルとかブラックメタルとか、超アンダーグラウンドでテクニカルなものが好きだと思われているんですけど。ドラムをはじめたきっかけは実はBUMP OF CHICKENなんですよね。僕が最後にこのバンドに入ったんですけど、加入してからどんどん、どんどん難しくなっている気がするんです。錯覚じゃないよね?

丸山:それは、やってくれるから、そうなっていったんだよね。

宮田:漠は、打ち込みでデモを作るんです。空想の世界で作るから、実際にやるとなるとそこで差が生まれますよね。そこは見ていて思う。でもそれを岳はなんとかして、自分の体だけでやろうとしてる。ドラム叩いてる時、手の数増えてるんじゃないかというくらいに。

高井:一瞬、岳のスタジオ覗いたら、燃え尽きてた(笑)。

宮田:でもそのくらいのものを求められているので、岳のドラムの成長スピードがすごく早い。

近藤:このバンドは、何でもありなので。何でも対応できないとと思って。ほんとにこのバンドはいろいろな音楽を知らないと、表現がすべて中途半端になってしまうので。難しいけど、楽しいんです。

――プログレッシヴな曲では、とくにリズムの重要度が高いし軸になる部分ですもんね。こういう複雑にいろんな音楽が混じり合っているのは、曲を作る丸山さん自身がいろんな音楽を聴いて、ここにアウトプットしているからなんですか。

丸山:そうですね。YouTube漁ってます(笑)。なんでも聴いておこうと思って。

――それは、他にないものを作りたいから?

丸山:ないものを作りたい。あってもなくても、あまり関係はないんですけどね。自分が思う良いものを作りたいというか。自分が聴きたいものを作りたいんですよね。

――そうすると、変化球がたくさん生まれてしまうわけですね。1曲のなかにも、いろんな要素が詰まっていますね。

丸山:アルバムとしてどうなのかっていうくらい(笑)。

宮田:曲ごとにばらばらなんですけど、またその曲のなかでもまた変化していく。地元のバンドの先輩に聴かせたら、「この1曲で、4曲くらいできそうだね」と。

――うまくアイテムをばらせば4曲もできるのに、もったいないっていうくらいの感覚ですよね。

宮田:そう言われたのは印象的でしたね。俺らは、これが普通になっているんですよね。俺らは先に行ってます。行っているので、追いついてください。

――アメリカのプログレッシヴ・メタルバンドで、Between the buried and meというバンドがいて、個人的にすごく面白いバンドだと思っていて好きなんですが――。

丸山:ああ、僕も好きですね。

――通じるものがあるんですよね。最近の彼らの作品はスペイシーに寄っていますが、少し前の作品には何でもあり感、いびつな面白さがあって。日本にもこういうバンドいないかなと思っていたんですが、ここにいたかという感じがある。a crowd of rebellionはさらに、その面白さをポップにも昇華しているバンドですね。

宮田:難解にすれば難解にするほど、よりポップさをプラスしなきゃいけないというか。俺たちは、コアな人だけのために作っているわけじゃなく、みんなに聴いてほしいし、みんなの心に届いてほしいし。それにはやっぱり、わかりやすさ、聞きやすさ、可愛らしさ、いろいろあると思うんですけど、それをプラスしなきゃいけないんです。それがいちばん難しいんですよ。

丸山:難解にするっていうのは、難解にすればいいだけなので。わかりづらい曲になるだけなので、そっちのほうが言っちゃえば簡単に作れるんだと思うんです。キャッチーに聞かせるのが、いちばん悩むところで。やらなきゃいけないところだなとは思っていますね。

――アルバムとして、まとまるかなという心配はないんですか?

小林:まとまらせなくてもいいじゃないかと。今回はアルバム・タイトルが「Xanthium」というんですが、これは「オナモミ」という草で、よくみんな子どもの頃にバカ草といって、くっつけて遊んだりしたと思うんです。そのオナモミのように、多方面にトゲが出ているアルバムにもしたいなと思っていたんです。さらに、この中のどの1曲でもいいので、誰かの耳とか心にくっついて離れなければ、それはいいことなんじゃないかなって。あとは花言葉が「粗野」とか「粗暴」というのもあって、好き勝手やっちまおうぜというのもあった。そのコンセプトのもと、あえてまとまらなかったのは正解というか、しかるべきだったんじゃないかなと思ってます。コンセプチュアルにはしたくなかったので。

宮田:前回まではコンセプト的に流れもしっかりときれいに聴けるように作っていたんですけど。今回は1曲、1曲が主人公なんですよね。1曲1曲が、ドラクエ1の主人公、2の主人公って感じで、しかも全員そろってるくらいの。すべて主人公なので、あなたの好きな主人公を選んでくださいというアルバムですね。しかも、みんな強すぎる(笑)。もちろん流れはいいように考えていますけどね。こんなにはちゃめちゃにやらせてもらって、幸せです(笑)。メジャー・デビューしてもこんなに好きなことをやらせてくれる会社なんて、あるのかなって思うくらい。

――レーベルが、音楽をちゃんとおもしろがってくれている?

宮田:感謝ですよね。でもメジャー・デビューをして自分たちで鎖をつけていたところもあったんですよね。無意識のうちに、こうでなきゃいけないとか、心を縛ってやっていた部分も少なからずあったと思うんです。今回はもうその鎖もね。

丸山:パーン!と。

宮田:“今回はパーン!”って書いておいてください(笑)。

小林:歌詞を書いたり、メロディを作る時もキツイことは多少なりともありましたけど、今回は悩みながらも楽しかったんですよね。

――そのパーンとはじけるに至るには、段階的にも何かあったと思いますか。

宮田:前作のEP『Daphne』(2015年)を作っている時は、我々暗い気持ちだったんです。俺と亮輔で歌詞を書いていても、つらい、つらい、っていうのが、全面に出ている感じで。つらいっていうのは、会社やメジャー・デビューがどうとかではなくて、当時自分に起こっている状況、心に起こっている状況がふたりともつらくて、歌詞も暗くなり。漠が持ってくる曲もトーンが低めの曲が多かったんですよね。『Daphne』もすごくいい作品で、大人になったという感覚があったんですけど。でも俺たちはまだ、ここにいくには早いのかなというか。俺たちやっぱまだ、ガキっすっていう(笑)。そういうものを出したかった。それが、解き放たれたアルバムになっているんですよね。

丸山:初期衝動をもう一回呼び起こしたかったという感じですね。いろいろやさぐれてきたけど(笑)。ここにきて、もう一度っていう。

――『Daphne』を作ったことはバンドにも大事な時期だったし、大事な作品にもなったと。

宮田:そうです、『Daphne』があった上での作品なので。『Daphne』は今聴いても、すごくいい作品だし、悲しくなるんですけどね(笑)。悲しくて、ダークな音楽がもともとみんな好きで、その究極体が『Daphne』で。でも俺たちこのまま、ずっと悲しいバンドでやっていくのかなっていう。ちがうよね、もともと俺たちバカだよねって(笑)。くさむら走りまわって、泥だらけになって、時には泣いて、大笑いして、っていうのが俺たちだよねって。子供に戻ったアルバムなんです。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる