レジーのJ−POP鳥瞰図 第11回
実りある音楽体験を届ける“目利き”としてのレーベルーー『CONNECTONE NIGHT』が示した充実
ライブアクトとしての強さと「360度ビジネス」
この日の出演グループは、各々が音楽性の幅を見せただけでなく、ステージングにおいてもたくさんの見どころを作った。出演順にそれぞれのアクトを簡単に振り返ってみたい。
オープニングアクトのArt Buildingは初の東京でのライブということで少し緊張した面持ちを見せていたが、轟音に乗る前田晃希(Vo./Gt.)の歌声からは、BUMP OF CHICKENの藤原基央を彷彿とさせるような世界を見透かす感じの芯の強さが伝わってきた。
実質的にはこの日が初ライブとなったぼくのりりっくのぼうよみは、ピアノ一本で披露した「Black Bird」のシリアスなパフォーマンスで、浮ついた会場の空気(登場時には「かわいい!」という歓声もあがっていた)を一変させた。ネトウヨをモチーフにした楽曲「CITI」で見せたアグレッシブな表情は、「新世代の代表」というポジションにふさわしいカリスマ性を感じさせた。
続くTHE THROTTLEのステージから感じたのは「過剰さ」である。雄たけびをあげながら登場し、ラストの「Let’s GO TO THE END」では高岩が客席に降り、さらにMCでは「ドーム」「世界」という言葉が飛び出す。そんなトゥーマッチなステージングには、ロックンロールというものが生まれた瞬間を再現しているかのような強烈なエネルギーがあった。
前述のとおりイベント中盤に登場したAwesome City Clubは、従前からのチャームであった楽曲の良さや5人のクールな佇まいに加えて、この日はいつも以上に熱量がほとばしるライブを展開した。キーになっていたのはフロントの2人で、「4月のマーチ」ではPORINのアクションに引っ張られて演奏が徐々に熱を帯びていくのが感じられたし、「Don't Think, Feel」ではハンドマイクで歌うatagiによってバンドにパワフルな魅力が付与されていた。
続くsympathyはギターロックバンドが少ない中での演奏、かつギターの田口かやながライブ当日にぎっくり腰を発症という不利な状況でのステージとなったが、演奏前後でメンバーの雰囲気がガラッと変わるところにバンドとしてのポテンシャルを感じることができた。また、ボーカルの柴田ゆうが醸し出す大きな虚無感(個人的には前田敦子を思わせるものだった)にはかなり引き込まれた。
トリ前に登場したSANABAGUN.は、ジャズ、ロック、歌謡曲などあらゆるジャンルを消化したサウンドを生演奏で聴かせ、そこに個性の強い2人のフロントマンのパフォーマンスが絡むことでユニークな空間を生み出していた。すでに彼らの提示するライブは誰も真似できないオリジナルなものになっているのではないだろうか。また、メジャーレーベルのイベントで新曲「メジャーはあぶない」を繰り出す反骨精神(とお茶目さ)も印象に残った。
そしてトリを務めたのが、実に18年ぶりのクアトロ出演となったRHYMESTER。短時間のステージではあったが、パフォーマンスだけでなく曲間のMCも含めてフロアをガッツリ盛り上げた。カラーのはっきりしたアーティストが選んだレーベル、そしてそのレーベルが主催するイベントへの参加を選んだオーディエンスへのメッセージにも聴こえる本編ラストの「The Choice Is Yours」はなかなか感動的だった。
今回出演した7アーティストのステージを思い返してみて改めて感じるのは、どのアーティストにもライブアクトとしての「華」があるということである。見た目のキャッチーさ、まとっている雰囲気、所作の一つ一つからにじみ出てくる人間性など、単なる演奏のうまさや勢いだけでないところで何だか気になってしまう魅力。こういった要素は、「パッケージからライブへ」「音楽を聴くときはYouTubeで動画とセットで」という大きな潮流の中にある今の音楽シーンにおいてますます重要になってくるものである。折しも<CONNECTONE>は「音源を売ったら終わり」ではなくライブ活動やグッズ販売まで含めて収益の獲得を目指す「360度ビジネス」を掲げているが、生でライブを見る価値を感じられる華のあるアーティストを揃えているのはレーベルのビジネスモデルとも合致している。