小田和正などベテラン勢「オールタイムベスト」ヒット続く “一度整理”されたJPOPが向かう先は?

 小田和正、DREAMS COME TRUE、山下達郎、松田聖子、松任谷由実。日本の大衆音楽の一端を長年担ってきた大物たちが、2010年代に入って同じようなフォーマットの作品をリリースしているのはなかなか興味深い。パッケージメディア自体が終わりに近づいていく中での徒花的なもの・・・という意地悪な見方もできるかもしれないが(例えば山下達郎は『OPUS ~ALL TIME BEST 1975-2012~』のリリースに関して「パッケージがいよいよなくなるっていう危惧があって、その前にちゃんとしたベストを出しておこうっていうこと」と発言している:参考)、ここから自分が感じるのは「日本のポップミュージックが一つの区切りを迎えつつある」ということである。「全てのアーカイブが時系列関係なくフラットに」「誰もが発信者になり得る」というインターネットがもたらした考え方がいよいよ本格的に浸透してきたのがここ数年の出来事。そんな時代のうねりの中で、ベテランたちは一旦「従来通り」のやり方で自身のキャリア=いわば「日本のポップミュージックの歴史そのもの」をまとめた。このあたりの動きは、今年の1月に放送された『亀田音楽専門学校 シーズン3』(NHK Eテレ)におけるこれまでのJPOPの振り返りや同じく1月に出版された宇野維正『1998年の宇多田ヒカル』など、各方面における「日本の音楽の流れを一度整理してみよう」というムーブメントと通じるものがあるように思える。

 では、「一度整理」したらその後はどうなるか? ここからは「期待を込めて」の話にはなるが、音楽に関わる人の多くが「時代の節目」を感じている今、いよいよ新しいJPOPの形が生まれようとしているのかもしれない。それを提示するのはいまだ誰も知らない若手ミュージシャンなのか、それともこれまでの活動をリセットして自由になった大ベテランか。2016年もあっという間に3分の1が終わってしまったが、「未来につながる兆し」を残りの3分の2で見つけられるといいなと思う。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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