キーパーソンが語る「音楽ビジネスのこれから」第6回
CONNECTONEレーベルヘッド 高木亮氏インタビュー「“音楽の匂いが濃い”人に集まってほしい」
音楽文化を取り巻く環境の変化をテーマに、業界のキーパーソンに今後のあり方を聞くインタビューシリーズ。第6回目に登場するのは、ビクターエンタテインメント・CONNECTONEレーベルヘッドの高木亮氏。昨年の立ち上げ以来、同レーベルはRHYMESTERを筆頭に、Awesome City Club、SANABAGUN.、sympathy、ぼくのりりっくのぼうよみと、革新的なアーティストの作品を次々と世に送ってきた。所属アーティスト一同が会する「CONNECTONE NIGHT VOL.1」の開催を5月6日に控える中、レーベル発足からの1年の歩みを振り返ると同時に、ローリング・ストーンズやスマッシング・パンプキンズを手掛けるなど洋楽ディレクターとしても数々の実績を持つ高木氏に、現在の音楽シーンをどう捉え、CONNECTONEをいかに成長させていくかを語ってもらった。(編集部)
「とにかく新しくて面白いものを」
ーー高木さんがCONNECTONEを立ち上げて1年が経とうとしています。レーベルからRHYMESTER、Awesome City Club、SANABAGUN.、sympathy、ぼくのりりっくのぼうよみがリリース、デビューを果たしましたが、手応えはいかがですか。
高木亮(以下、高木):この1年の自己採点は、50点だなと考えています。少し高めの目標を掲げてはいましたが、数字がそれに達しなかったので。ただ、レーベルイメージをうまく浸透させることができたのは、プラス要素だと思います。メディアでも、CDショップの店頭でも、最近になって“CONNECTONEくくり”みたいなものが成立するようになってきた。まだ入り口ではありますが、ブランディングは強く意識して運営してきたので、レーベルの方向性自体は間違っていないのかなと。
――CONNECTONEの方向性とは。
高木:とにかく新しくて面白いものをやっているレーベルだ、というワクワク感にこだわっています。そういう意味では、Awesome City Club、SANABAGUN.、sympathy、ぼくのりりっくのぼうよみと、音楽的には雑多なんだけれど、いずれも「面白そうだ」という期待感を持たせられる新人が集まってきているのかなと。
――冒頭の“自己採点”に関して、「数字」の部分を厳しく評価されていますね。
高木:CONNECTONEには、CDだけではなくライブやグッズ、ファンクラブなどオールライツにかかわっていくというコンセプトがあります。ただ、そのマネタイズには少し時間がかかる。1年目はどうしても、今のマーケットの中でCDだけのセールスで戦わなければいけなかったので、難しいところはありました。ただ、Awesome City Clubなどは着実にライブの動員も増えてきています。2年目に向けて非常に楽しみなところまでは来ているのかなと思いますね。
――Awesome City Clubは自主企画ライブやクラウドファンディングを使ったCDのリリースを行っており、ぼくりり(ぼくのりりっくのぼうよみ)は地上波のテレビ出演を重ねるなど、さまざまな経路で世の中との接地面を作っているように感じます。プロモーションにおける多チャネル化は、レーベルの方針でもあるのでしょうか。
高木:まずプロモーションにおけるメディア露出への考え方として、レコード会社にいると、どうしてもリリースのタイミングに偏るじゃないですか。これがそもそもの間違いだったと思うんです。リリースを主軸として考えつつも、リリースの間のライブも同等に重要なものとして考え、露出ポイントを出し続けていく――ぼくりりがいい例ですが、昨年12月にリリースしたアルバムが、今もそんなに下がらずに動いていて。先日も『ZIP!』(日本テレビ)に出たんですけど、iTunesの週間アルバムチャートで、また10位まで上がったんです。こういうことをずっと続けていくのが大事なんだなと、あらためて思いますね。
――これまでの一般的な音楽業界の活動サイクルとは異なると?
高木:例えば1年で「2シングル/1アルバム」という典型的なサイクルがあったとすると、12ヵ月のうち6ヵ月だけ働いていればよかったんですよね(笑)。でも僕は、12ヵ月をトータルでしっかり考えていかなければいけないと思う。
――レーベルとしてアーティストにコミットしていく時間も、より長くなりますね。
高木:そうです。事務所さんと同じ目線で考えているつもりだし、そういう体制をより強化していかなければと考えています。