村尾泰郎の新譜キュレーション 第5回

USインディーは学園ドラマ並のキャラ揃い? F・コスモス、J・ウォーレスら個性豊かな5枚

 ジュラードが詩人なら、ナッシュヴィル出身のジェイムズ・ウォーレスはキュートな変人。ジェイムズが率いるバンド、スカイウェイ・マンは、日本盤がリリースされていないにも関わらず、これまで2度来日して、口コミで集まった観客を虜にした。そして、ついに2012年にアナログのみでリリースされたセカンド『モア・ストレンジ・ニュース・フロム・アナザー・スター』が日本限定でCDでリイシューされることに。プロデュースを手掛けたのは、シンガー・ソングライター/プロデューサーとして注目を集めるマシュー・E・ホワイトで、ヘルマン・ヘッセの小説の題名をヒネったアルバム・タイトルそのままに、本作にはストレンジな味わいのナンバーのナンバーが並んでいる。小皿を叩くような軽快なパーカッションが多彩なリズムを刻むなか、アメリカーナ、ワールド・ミュージック、サイケなど、様々な要素が入り混じって奇妙なパーティーが始まる。ムシ声みたいな歌声もチャーミングで、ノベルティ感溢れるポップ・センスに頬が緩みっぱなし。

 最後は話題のコンピレーションを。近年、カセットテープの人気が再燃するなかで、カセット専門レーベルとして2007年にカリフォルニアで設立されて注目を集めているのが<バーガー・レコーズ>だ。ロック好きのファッションデザイナー、エディ・スリマンがバーガー関連の曲をショウでかけまくったことで、バーガー旋風はファッション界にも飛び火。そんななか、日本盤限定のレーベル・コンピ『Burger Records Nuggets』がリリースされた。ほとんどが無名に近いアーティストながら、その闇鍋感こそ本作の魅力。ローファイなサーフ〜ガレージ・サウンドとバブルガムなポップさがレーベル・カラーだが、チューンヤーズの妹、ルース・ガーバスのユニット、ルーシーや、アリエル・ピンクが絶賛したダニー・ジェイムズといった若手に混じって、ボニー・プリンス・ビリーの相棒、カイロ・ギャングが初期ピンク・フロイドみたいなサイケ・ポップ・ナンバーを提供しているのが個人的には嬉しいところ。タイトルそのままに、ガレージ・ロックの名コンピ『Nuggets』を思わせるB級感が漂っているが、ラモーンズが出演したロックムービー「ロックンロール・ハイスクール」のハジけた雰囲気を思い出したりもして。USインディー学園天国の始まり!

■村尾泰郎
ロック/映画ライター。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CULÉL』『OCEANS』などで音楽や映画について執筆中。『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『はじまりのうた』『アメリカン・ハッスル』など映画パンフレットにも寄稿。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。

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