太田省一『ジャニーズとテレビ史』第十四回:『ジャニーズJr.のテレビ史』
ジャニーズJr.とテレビ番組の深くて長い関係ーー 『ガムシャラ!』に至るまでの歴史を紐解く
また、関西ジャニーズJr.の存在も忘れるわけにはいかない。1990年代後半のJr.ブームには、後に関ジャニ∞のメンバーとなるJr.たちがいた。彼らは『8時だJ』などにも出演し、それぞれ存在感を発揮していた。
例えば、渋谷すばるの歌唱力はその頃から折り紙つきで、滝沢秀明と並ぶくらいの人気を博していた。いま手元にある2000年頃のJr.名鑑を見ると、Jr.とファンが選ぶアンケートで「恋人にオススメな人」で滝沢と今井翼に次いで3位、「元気な人」で堂々1位とその人気ぶりがうかがえる。また「楽しい人」では横山裕が1位になっていて、当時からバラエティ適性の高さを発揮していたことをうかがわせる。彼らの音楽面をフィーチャーした『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)、多彩なバラエティ企画が楽しい『関ジャニ∞クロニクル』(フジテレビ系)と幅広く活躍する関ジャニ∞の現在の姿は、ある意味この頃から予見されていたと言ってもいい。
『ガムシャラ!』も、現在のJr.たちが自分たちの道を切り開いていくきっかけになりうる番組だ。もちろん深夜番組なので、ゴールデンだった『8時だJ』とは予算も違い、番組の作り方も変わってくる。ただその分、Jr.たちの力を磨くよい機会になっている部分もあるだろう。例えば、『ガムシャラ!』には『8時だJ』のヒロミのような存在はいないので、Jr.自らがMCになる。そのなかで安井謙太郎が見せる仕切りは見事で、MCとしての将来性を感じさせる。同時にそこには、1990年代以来のジャニーズのバラエティ進出が作り上げた新たなジャニーズの伝統も見て取れる。
そしてジャニーズの活躍する分野は、バラエティに限らずいまや報道番組や情報番組にまで広がっている。これからもその傾向は続くに違いない。そうしたなか、昨年ジャニーズ初の気象予報士に合格した阿部亮平と岸本慎太郎や今年東京芸大に合格しジャニーズ初の国立大生となる「三味線王子」こと村治将之助など、これまでにないアピールポイントを持つJr.も増えつつある。『ガムシャラ!』を始め、今後ジャニーズJr.がメインとなる番組には、そんなジャニーズJr.の進化を生かした、これからのジャニーズを見据えた企画も期待したい。
■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『中居正広という生き方』、『社会は笑う・増補版』(以上、青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。