作詞家・zoppが小説執筆で得た経験値とは? 「格段に『ヒントを出す』のが上手くなった」

「作詞家という職業がもっと広く浸透してほしい」

――先日行なった出版記念イベントでも「作詞家が『将来なりたい職業』の8位か9位くらいになればいい」と言っていましたね(参考:https://realsound.jp/2016/01/post-6001.html)。

zopp:1位はちょっと無理ですからね(笑)。自分が生きている間にTOP10には入ってほしいなと思ったので。あと、作詞家って一般の方からすれば“大先生”というイメージが強いようなので、20代や30代くらいの人が活躍しているのをもっと見てもらえば、「こういう風になりたい」と思ってもらえるでしょうし、同世代で子供のいる方にも「パパやママの世代にはこういう作詞家さんがいるんだよ」と伝えてほしいです。

――1作目である『1+1=Namida』と今作で、書き方を変えた部分はありますか。

zopp:1作目は主人公2人の心理描写を多めに入れていて、2作目では、同じく主人公が2人ではあるものの、前作よりも地の文で気持ちを表現しないように心掛けました。行動や台詞で描写することで、読みやすさを意識して説明っぽくなるのを避けたんです。

――たしかに、スムーズに読み終わったという印象です。

zopp:心理描写を多くすることで、登場人物の気持ちを押し付けてしまっていないかという懸念もあって。そういう意味では読んでいただける方に対して、余白を作れていたのかもしれません。あと、主人公のうち1人を女性にしたというのも大きな違いでした。

――そこは女性視点の歌詞を書くときと同じスタイルだったのでしょうか?

zopp:はい。でも、女性視点はどちらかといえば苦手なので(笑)。ただ、面白いことに小説や作詞において、苦手なものほど評価されたりするんですよね。

――「異性を描写した歌詞のほうが共感される」というのは、たまに作詞家さんから聞く“あるある”のようなものですね(笑)。

zopp:多分、気持ちが入りすぎてないからでしょうね。例えばテゴマスのラブソングに関しても、ファンの方から「どうやったらあんなキュンキュンする歌詞が生まれるんですか?」と訊かれますが、僕自身は恋愛の歌を書くのが苦手だと思っていて。レパートリーも少ないですし、シチュエーションも限られているじゃないですか。そう考えると、無理にひねり出さないで自然体にしているからこそ、評価していただけているのかもしれません。力が入りすぎると、自分の意見になっちゃいますから。

後編【「作家の活躍できる時代が戻ってきた」zoppが明かす、作詞家を取り囲む状況の変化】へ続く

(取材・文=中村拓海)

■リリース情報
『ソングス・アンド・リリックス』
発売日:2016年1月15日
発売元:講談社文庫

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