2ndアルバム『ダウトの行進』
空想委員会が語る、チームの結束と音楽への自信「自分の素を出した方が、お客さんと向き合える」
「信頼関係は、日に日に増す一方です(笑)」(佐々木直也)
ーー「新機軸」は、ご自身の死生観と向き合った楽曲で、今までの空想委員会にはなかったものですよね?
三浦:キッカケは、星野源さんの著書(『蘇える変態』)を読んだことなんです。病気をされていた時期のことが書かれていて、それを読んでから色々考えるようになって。例えば、僕の祖父が入院してから亡くなるまでの間とか、自分は何を考えていたんだろうって。もっと(祖父の)話を聞けばよかったなとか。それで、初めて「死」に向き合うような歌詞が生まれたんです。よく、「たとえ死んでも自分の記憶の中に、その人は生き続ける」って言いますけど、それって、誰かと会うことで自分がその人に影響され、それまでの基準や価値観が変わっていくということなのかなって思うんですよね。そもそも、「確固たる自分」なんてものは存在しないし、いろんな人と出会って、どんどん変わっていけばいいって最近は思っています。
ーー「不在証明」では自分の居場所、存在理由について歌っています。こういう気持ちになることって、今もあるのですか?
三浦:この曲の歌詞は、バンドも何もない時、就職活動をしていたときの自分の心境を書いているんです。「この先、何かいいことあるのかな」「生きてて意味があるのかな」とか(笑)。結構考えていた時期で。でも、そのときにこういう曲を書いたとしても、今回のような歌詞にはならなかったと思うんですよね。ある程度時間が経って、今の状況だからこそ、自分の気持ちをちゃんと整理して、聞いている人にも届くような歌詞になっているのだと思いますね。この曲は、今の僕自身のことも“込み”で聞いてもらって、「今、不安や恐れがあっても、好きなことを貫けばいつかいいことあるかもよ」って言いたい。
佐々木:いや、この曲はすごいっすよ。
三浦:はははは。
佐々木:レコーディングのときに、歌っているのを聞いて、すんごくよくて、息するの忘れましたから。この歌詞で言ってること、今も僕が時々思うんですよね。やっぱり、曲を作っているときって、普段考えないようなことも考えたりするんです。「死んだらどうなるんだろう、誰か悲しんでくれるのかな」とか(笑)。
ーーそんなこと、メンバーの中で一番考えなさそうですけどね(笑)。
佐々木:あははは。意外に考えちゃったりするんですよ。だから、この曲はすごく響いたのだと思います。
ーー「容れ物と中身」では、“見た目で女性を選んでしまう自分は、結婚できるのか?”といったことがテーマになっていますが、この問題に関しては、おふたりはどうですか? 女性を“見た目”と“中身”、どちらで選びます?
三浦:これ、二人とも言葉に気をつけて答えてね、下手すると女の子から嫌われるよ(笑)。
岡田:ええっと、見た目より中身重視で……(笑)。
佐々木:僕は中身ですよ! だって、可愛い子って性格悪いじゃないですか(笑)。
三浦:その決めつけもどうなんだ!(笑)
ーーきっと佐々木さんは、過去に辛いことがあったんですね(笑)。
佐々木:はい、過去にそういう恋愛をしたんです。なので、“付き合う前は三回デートして性格見極めなきゃダメ”っていうルールを自分に課していますね。
三浦:え? なんの話してんの? 関係なくない?(笑)
佐々木:いやいや、中身を知るために大切なことだって。
ーーまあでも、結婚するとなると、色々考えますよね。
三浦:そうなんですよ。最近、結婚する人が周りに多くて。いやーちょっと、すげえなと。だって、いつかはおじいちゃんおばあちゃんになるわけでしょう。それでも幸せっていうことは、やっぱりみんな中身で選んでるってことですよね。僕はそうなれるかなって思ってしまう。「容れ物と中身」は、そういう悩みを歌った曲です(笑)。
ーーでも、三浦さんの歌詞って、ちょっと自分を俯瞰して面白がって見ている視点があるから、こういう歌詞を書いても嫌味にならないのだと思います。
岡田:ああ、確かに、三浦さんにはそういうところありますね。
三浦:そうか、自分じゃわからないけど。
ーーメンバー同士の信頼関係はどうですか?
佐々木:信頼関係は、日に日に増す一方です(笑)。シングルのアレンジをやっているとき、締め切りまであと1日ってなってテンパってたら、岡田君からメールが来たんですよ。「自由にやっていいよ、信じてるから。佐々木くんは何やってもカッコいいから大丈夫」って。三浦君からも、「大丈夫。信じているから」みたいに言われて。「え、なにこの人たち?」と(笑)。
ーー青春映画みたいじゃないですか。
佐々木:そうなんですよ。今まで長く活動してきて、そんなの言われたこと一度もなかったのに。それで二人のことを、ますます好きになりました。
ーー(一同笑)
岡田:前作のミニアルバム『GPS』を作っている頃から、明らかに三浦さんが変わり始めてて。歌詞も自分のことだけじゃなくて、外に向けたものになって。はたから見てても、何か吹っ切れた感じがしましたね。何か、自由にのびのびと楽しくやっている感がすごくあった。それが頼もしく感じましたね。僕ら2人も、今まで以上に自由にやれるようになりました。
ーー三浦さん、何かキッカケがあったんですか?
三浦:ZAZEN BOYSとASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブを袖で観たのは大きかったですね。ああ、今までの自分の意識じゃダメだと思ったし、このラインに行かなきゃ、お客さんと真っ向勝負しなきゃダメなんだなっていうふうに反省しました。それはでも、気負いっていうのとは全然違って。むしろどんどん素に戻っていったんですよ。自分を素のまま出した方が、ちゃんとお客さんと向き合えるっていうか。心を開いてステージに立つ方が、相手から来るものに対してもちゃんと返せるってことが、ライブをたくさんやって分かったんですよね。だから最近はほんと、わがまま野郎全開です(笑)。
佐々木:今やっているツアーとかすごいですよ。俺らに想定外のこと仕掛けてくるから。
三浦:きっとお客さんも、2人のテンパった顔を見たいんじゃないかと思ってさ(笑)。
佐々木:セットリストにない曲を急にやり始めたりとかね。そういうの、昔だったら考えもしなかったことですね。「決めたことをしっかりやっていこう」っていう感じだったんですけど、今は会場の雰囲気を見て決めたりとか、演奏しながら「次こういうことをやろう」って考えたりとかするようになって。それは自分たちにとっては成長だと思いますね。
三浦:ステージで3人が何をやろうと、お客さんがあったかい目で見てくれる感じはすごくある。最近はやりたい放題だからね(笑)。でも、それがバンドだけで完結するものじゃなくて、みんな巻き込んでやりたい放題にして。結果的に初めて来た人も、一人で来た人も、「面白かった!もう一度行きたい」って思ってもらえるようにしたいっていう気持ちは、バンドもスタッフもみんな同じです。そう、最近は初めての人がすごく多いんですよね。輪はどんどん広がっていっている気はします。