「我々は80〜90年代をまだ生きてる」4人のアイドル論客が語る、アイドル楽曲とシーンの変化

「属するところに閉じこもってほかのアイドルを聴かなくなっている」(ガリバー)

――2015年のアイドルシーンを俯瞰したとき、みなさんはそれぞれどのようなことが印象に残っていますか?

岡島:インディーズシーンに関しては、Negiccoだけがライブ現場の規模を順調に拡大させ、世間的なブレイクへの足掛かりを得た、という印象です。ほかにもステップアップしているアイドルはいると思うのですが、世間的なブレイクには遠く、停滞気味だったかなと。

ガリバー:Negiccoはかねてから武道館を目標に掲げていて、今年がそのターニングポイントになるといえるでしょうね。

Negicco「日比谷野外大音楽堂 Road of Negiiiiiii 〜Negicco One Man Show〜 2015 Summer」(2015年10月20日発売 DVD)ティザー映像

 

宗像:ライブ現場の拡大でいうと、新宿BLAZEから恵比寿リキッドルーム、赤坂BLITZなどを通過するのは簡単になっているという印象。ただ、そこからZepp TokyoやZepp DiverCity TOKYO公演という規模までいったものの、客席を埋めることができずに失敗するアイドルも多くみてきました。

岡島:その傾向って、インディーズアイドルに多いですよね。赤坂BLITZあたりのキャパの段階まではネットのプロモーションだけでも、現場でのファン層拡大だけで埋めることができると思うのですが、そこから上のキャパシティを埋めるには、インディーズアイドルファン以外にグループの名前を浸透させる必要がある。やはり今のところは、世間的なブレイクを果たすためには大手事務所やメジャーレーベルに入ってプロモーションをするというやり方を選ばざるを得ないというのが実情なのかもしれません。あとはストーリーが上手く描けていないグループが多く、単純にメンバーが疲弊してしまうことが多い印象もあります。

ガリバー:運営もBLITZや新宿BLAZEでライブができたと手放しで喜んでも、全くその先が見えていないことが多いのかも。グループが多くなった結果として、公演の開催自体をニュース記事にするメディアも少なくなりましたから。コアファン以外だと「あ、やってたんだ」って後から知るみたいなことが多いですよね。

岡島:活動の定義ができてないから、ファンもどうしたらいいか分からないんですよね。「動員を上げていくことが目的ではない」と明言していたら、公演の規模が拡大していかなくても、ファンも気の持ちようがあるんですが……。当たり前のようにリリースイベントをフリーでやって、ワンマンやって、その規模をワンクールごとに上げていって、いいタイミングでメジャーデビューする……という流れがパターン化していて、疲弊しているファンも多い。

宗像:アイドルグループの母数が少なかったころは、それが決まったルーティーンとして確立されていたと思うんです。でも、母数が多くなって、動員が多ければどこでもメジャーデビューができるという時代でもなくなったので、ライブアイドルにとっては厳しい状況に変わりつつありますね。

ガリバー:でも、今回の楽曲大賞でインディーズ部門の上位になった2組はそこの基準にまだ達していないですよね。わーすたはSHIBUYA CLUB QUATTROが次の会場だし、BiSHはリキッドルーム公演を終えたばかり。あくまで動員は一つの基準でしかないように感じます。

岡島:楽曲大賞も一つの基準でしかないですからね。ちなみに「アイドルシーンは細分化した」という声はファンからも多く挙がっていますが、これってどうなんでしょうね。

ガリバー:やっぱりしたと思いますよ。細分化したからこそ、特定の界隈がランキングに入っていないことがわかります。たとえばアークジュエル系、プラチナム系、アリスプロジェクト系という、東京インディーズ組のランクインが少ないのは、人気がないのではなく、その辺りのグループのファンが投票していないだけでしょうから。でも、現場に人はいるんですよ。

岡島:細分化というより、多様化が進んだこととSNSの発達が相まって「自分のタイムラインが世界の全て」みたいに感じてしまう人が増えただけなんじゃないですかね。

ガリバー:みんなそれぞれの属するところにどんどん閉じこもって、ほかのアイドルを聴かなくなっていっている、ということは確かにあるかもしれません。ライブで共演するグループはいつも同じメンツという場合も多くなってきたし、意識的に俯瞰してみるようにしなければ、必然と触れるアイドルが固定化されるというか。「気づいたら俺<T-Palette>ばっかり聴いてる!」みたいな。

ピロスエ:あ、俺ハロプロばっかり聴いてる!

一同:(笑)。

ガリバー:あと、運営側がTwitterへ過度に依存するようになったのはここ数年の傾向ですね。ホームページは更新しないけどTwitterでは定期的に情報発信をしていたり。少し前まではそうじゃなかった気もするのですが。

ピロスエ:アイドルの公式サイトに行って、ディスコグラフィーを見ても最新作が載っていないという場合はよくあります。特にインディーズに多い傾向ですね。あと、「好評発売中」としか書いてなくて、発売日がいつなのか分からなかったり。

岡島:我々のようなデータ至上主義世代からすれば、考えられない所業ですね(笑)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる