RealSound×LINE MUSIC特別企画

【PR】RealSound×LINE MUSIC特別企画 Mummy-D×高橋芳朗が語る“青春80'sソング”

 

アルバムはアーティストが提案する最高のプレイリスト――Mummy-D

――さて、定額制についても話を聞いていきたいのですが、プレイリストは普段から活用していますか?

Mummy-D:自分で作成するプレイリストは、もっぱら仕事用で、インスピレーションとなるものをまとめて作っているくらいかな。

高橋:プレイリストを作ってしまうとそればかり聴くことになってしまいそうだから、今回みたいな機会がない限り自分から作るようなことはまずないですね。とにかく新譜も含めて少しでも“知らない音楽”に触れたいようなところもあったりするから。
 そういえば以前にDくんがタケちゃん(竹内朋康)とマボロシを立ち上げた頃、参考資料としてロックとファンクがクロスオーヴァーするような曲だったり、ロックとブラックミュージックのフュージョンみたいな曲のプレイリストを作って渡したことがあったよね。そこでちょっとした“いい話”も生まれたりして。

Mummy-D:小5くらいだったかな、洋楽に詳しいおじさんが編集したカセットテープに、初めて聴いたラップの曲が入ってたんだ。子どもだったからそれを“ラップ”と認識して聴いていたわけではなかったんだけど、とにかく「かっこいい曲だなあ」って強く印象に残ってて。それからずっとその曲を探し続けてきたんだけど、なかなかたどり着けず、大学のときに「ソウル・ミュージック研究会」に入って、あらゆるダンスクラシックスも網羅したんだけど、それでも出会えない。もうカセットテープも紛失してたから、先輩に聴かせることもできない。ピストン西沢さんに電話するわけにもいかない。そしたらさ、そのヨシくんが作ってくれたマボロシ用のプレイリストの中にあったの、その曲が。

高橋:それが、今回Dくんが選曲してるイアン・デューリーの「Reason To Be Cheerful Pt. 3」。

Mummy-D:約20年の時を経て、「あの曲じゃん!」とわかったときは感動したねえ。

高橋:Dくんみたいにいきなりブラックミュージックずっぽりだとイアン・デューリーにはなかなかたどり着けないかもね。でもこういうことは本当にお互いさまだから。

――そういった音楽において互いを補填し合う形の関係値ってうらやましい形ですよね。

Mummy-D:今でもCDを買いに行ったら、ヨシくんに電話しちゃうもんね。これだけ音楽がたくさんある時代だし、そういったコンシェルジュ的な役割がいないと、なかなかいい音楽にはたどり着けないよね。

高橋:特にストリーミングサービスに関しては、まっさらな状態でいきなり始めると、広大な平原の前にポツンと立たされたような感覚になってしまうだろうから、プレイリストやレコメンド機能を駆使したとしてもやっぱりキュレーターは必要だと思う。
 で、僕自身がどういうふうにストリーミングサービスを活用しているかというと、言ってみれば“高性能試聴機”という感じですかね。もう仕事をする上で欠かせないものになりつつある。これだけのサービスが1,000円以下で利用できるというのは、はっきり言って安すぎるでしょ。ただ、あくまで試聴機だからストリーミングサービスを利用するにようになってもCDは買い続けてます。

Mummy-D:ヨシくんは仕事上、死ぬほど曲を聴かなければいけないから便利だろうね。でも、俺としては定額制サービスの状況の変化、っていうのは、正直まだ感じてないなあ。LINE MUSICも使ってみて、「あ、YANATAKEのプレイリストがある」って感じたけど、もっと話題になって、「このプレイリストを聴いておけば間違いない」っていう手法が確立していけばハッピーな感じはする。

高橋:Dくんはリスナーではなく、アーティストという立場からはストリーミングサービスをどのように受け止めてる?

Mummy-D:聴いてもらう入口が広がるという意味ではありがたいと思ってる。ただ、今は昔と比べると、ライブは別物だけど、「どのタイミングでお金が使われているのか」というのがわかりづらくなってきたよね。例えばCDをリリースして、発売日に爆発的に売れて、そのあとに同じような数が爆発的に売れることはない。でも、デジタルだったら、なにかしらのタイミングで一気に火が付くこともあると思うんだ。
 ゲームソフトも同じで、今だったら課金システムがあるから、発売日や配信日当日ではなく、違う日に大きな額が動く可能性もあるよね。つまり、定額制サービスは、そのお金の動きが見えづらい。コアなファンは、「自分が投資するお金を明確にしたい」という気持ちがあるから、定額制に登録するよりも、CDを購入したり、ライブやフェスに足を運んでグッズを買ったりするんじゃないかな。「私のお金はここで使われている!」というのを目で見たいんだと思う。

高橋:CDを買い続けている人にしろストリーミングサービスを活用している人にしろ、もう強固な目的がある人しか音楽を聴かなくなってるんだろうな。

Mummy-D:極端なことを言ったら、音楽にお金をかけたくないユーザーも多いと思う。だから「通信費も抑えたいのに、こんなに良い音楽に出会っちゃったら……もっとお金がかかっちゃう!」って感じる人も少なくないはず。

――それは新しい見解ですね。

Mummy-D:なるべく最小限に抑えたいわけですよ。出会ってしまったら、注ぎ込んでしまう可能性があるわけですから。

高橋:CMであれだけ甘美に描かれていたLINE MUSICのシェア機能もばっさり否定してしまうようなユーザーが実は結構いるのかもっていう。「こんなにいい曲を教えないでくれよ!」みたいな(笑)。

Mummy-D:でも、中にはヨシくんのように、出会ってもそれ以上の見返りをもらえる人もいるわけで、それがいつしか「面白い」という経験値となって蓄積されていけば、数年後には当たり前のサービスになっているかもしれないしね。ちなみにシェア機能は、奥さんに送ったりしてます。LINEのトークアプリ上で完結できるのは便利だし。

LINE MUSICではRHYMESTERの最新作『Bitter, Sweet & Beautiful』も配信中。

高橋:LINE MUSICのシェア機能に関して付け加えると、CMのように“自分の思いを伝える”手段として3~4分の曲をシェアするのはちょっとまどろっこしいのかもしれいない。こんなことはもうとっくに話し合われてると思うけど、今後LINE MUSICの利用者がもっともっと増えてきたら、15~30秒程度で終わるスタンプ性の高い楽曲が作られるようになるんでしょうね。
 あとストリーミングサービスは音楽を曲単位ではなくある程度まとまった形で聴くスタイルが基本だと思うから、これがコンセプト・アルバムやトータル性の高いアルバムの再評価を促進するようなことになってきたら面白いですね。2015年はケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』がジャンルを超えて高い評価を獲得していて、それに伴ってコンセプチュアルなアルバムの良さを見直そうという気運が今後高まってくると思うから。日本に目を移してみても、それこそRHYMESTERの『Bitter, Sweet & Beautiful』とかBase Ball Bearの『C2』とか、アルバム1枚で聴かせる傑作が続々と出てきていますからね。そういった意味では、今後の展開次第では名盤100選的な本の需要が再び高まってくるんじゃないかな。

Mummy-D:アルバムっていうのは、アーティストが提案する最高のプレイリストなんだよね。RHYMESTERでアルバムを作ってるときもさ、「そうだよね、これってアルバム復権になるよね……!? ねっ!」っておそるおそる話したりしてたもん。

高橋:いやいや、そこは押し出し強めでいきましょうよ(笑)。

Mummy-D:LINEは5800万人が使用してるんだよね? LINE MUSICやLINE LIVE、入口はどんなところでも構わないから、聴いてもらえるきっかけはある。それは定額制の大きな魅力だと思う。もちろん、究極はライブに足を運んでもらうことだけどね。

 

(取材・文=佐藤公郎 撮影/細谷 聡 (ConDollPhoto))

■高橋芳朗(たかはし・よしあき)
タワーレコード発行『bounce』、ヒップホップ専門誌『BLAST』編集部を経て、02年よりフリーの音楽ジャーナリストに。エミネムやブラック・アイド・ピーズのオフィシャル・ライターをはじめ、数多くのライナーを執筆し、『HAPPY SAD』などのラジオ・パーソナリティとしても活躍。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』。

■Mummy-D(マミー・D)
1970年横浜市生まれ。ヒップホップ・グループ:RHYMESTERのラッパー、プロデューサーでグループのトータル・ディレクションを担う司令塔。1989年グループ結成。ヒップホップ黎明期より、常に一線でシーンを牽引してきた。ヒップホップ・ジャンル外からの信望も厚く、椎名林檎、スガシカオなど多くのアーティストの作品でプロデュース、客演参加。最近はドラマ、CM、ナレーションなどでも活躍中。

■リリース情報
LIVE DVD『KING OF STAGE VOL. 12 Bitter, Sweet & Beautiful Release Tour 2015』(starplayers Records)
発売:2015年12月30日(水)
価格:Blu-ray ¥5,800+税
   DVD ¥4,800+税

関連記事