『EXTRA 11』リリースインタビュー
新体制となって2年、KIRINJIがライブを重ねて到達した音楽「今はそれぞれのメンバーがフィーチャーされるものにしたい」
昔の歌詞を読み返しても、何が言いたかったのかわからない
——気を取り直して、「心晴れ晴れ」のお話を。歌詞の話もお伺いしたいんですが、<あれが虹に見えたのかい 通勤列車さ、ただの いつもの>という部分がとても素敵ですよね。
堀込:自分の差し迫った現実的なことに、ロマンチシズムを見出さないと日々生きていくのがつらいだろうなって考えが僕の中にあって。それで川を渡っていく電車を見て、あれを虹だと考えてみようよ、ということですね。
——キリンジのインディーズ時代の「休日ダイヤ」(『2 in 1』収録)でも、「虹のようなものに体をあずけ」という歌詞で電車を虹に例えられていましたよね。当時は一読して「虹のようなもの」が電車だと気がつけなかったんですが、「心晴れ晴れ」だと通勤列車とはっきり書かれています。高樹さんが最近の詞の書き方として、「わかる言葉で書きたい」とインタビューなどで話していたのが、このあたりに出ているのかなと思ったんですが。
堀込:この部分についてはそこまで意識していなかったけど、でもわかるように書くというのは心がけてますよね。わからないように抽象的に書いてしまうと、3年ぐらい経って読み返して、自分でもわからないんですよ。
——そんなことあるんですか。初期の頃は特に難解でしたが。
堀込:ねえ、なんだったんでしょうね。昔のなんか全然わかんないんですよ。「千年紀末に降る雪は」(『3』収録)って曲があるんですけど、もう何を歌いたかったのか忘れちゃって(笑)。
——短編小説のような面白い歌詞だと思って聴いていたんですが……。
堀込:でもその真意というか、自分の中に何かあったはずなんですよ。もちろん聴く人が楽しんでくれればそれでいいのですけど、あとになってどういう意味か自分でわかんないものを書き続けるのってよくないんじゃないかと思いますね。
——確かに「心晴れ晴れ」は明快な歌詞になってますよね。それで、今回のアルバムの最後の曲は『11』で1曲目だった「進水式」です。元のアレンジで印象的だったコーラスがなくなって、高樹さんがひとりで歌っているんですね。
堀込:まず、とにかくアレンジを変えようと。前半はギターと歌だけで、歌は最後までひとりでっていうくらい変えると、違う雰囲気に聴こえていいかなと思って。やっぱりみんなで歌っているのと、ひとりで歌っているのでは、意味合いが違って聞こえますよね。まあどういう意味合いか僕にはわからないけど、聴く人は「意味が違うんじゃないか」っていうのを感じてくれるかもしれないし。
——元の「進水式」だとコーラスが入ることで「みんなで行こう」という意味合いに聴こえたんですけど、今回高樹さんひとりだったので……。
コトリ:はっ……。
弓木:えぇ……。
堀込:いやいや、なんかアレンジを変えなきゃってことだけですよ。僕にも意味はわからないから(笑)。