2ndアルバム『アリスとテレス』リリースインタビュー

天才バンドの“普遍的なロック”はどう生まれたのか「淡々と、真摯なものが4分間に詰まってる」

「説明できないですもんね、奇妙礼太郎の声のどこがどういいのかっていうのは」(Sundayカミデ)

ーーSundayさん、奇妙礼太郎が歌う自分の曲を残しておきたい、というのは、当然、それがよいものだからですよね。

Sunday:そうですね。あのー、まず、自分の曲なんで、自分が歌うのがいちばんいいって思ってるんですけど、奇妙くんが歌ってるのを聴くと、全然自分の曲っていう意識なく、素直に「いい曲やな」って思えたんで。すごいなと。コピーとかカバーとかそういう壁を、聴いてる方に一切感じさせないというか。誰の曲でもいいし、いい曲をいいボーカリストが歌ってる、っていう感じなんで。自分の曲だけじゃなくて、あの人のあの曲を歌ってほしいとかもいろいろあるんですけど、このバンドは、自分が作った曲縛りなんで。そもそもは奇妙くんが歌ういろんな曲を聴いてみたいと思ってます。

ーーSundayさんがそこまで思う、奇妙礼太郎の歌の魅力というのは?

Sunday:あの、僕が今まで見てきた中で言うと、首が太い、気道が。普段説明する時は、「奇妙礼太郎の声は、ネッシー見たのと同じぐらいすごいことやで」って言ってるんですけど、ちゃんと言うとーーこれ、初めて言うんですけどーー顔の形と喉の気道が、奇跡的にひとつの空洞になってるんですよ、たぶん。

奇妙:…なんだろう…。。。謎だ。。

Sunday:運動生理学上、稀有なことなんですよ。

ーーSundayさんって、そっち方面にお詳しいんですか?

Sunday:一応、そうなんですよ。トレーニングジムのトレーナーだったりするんで。じゃないと説明つかないぐらい……こんないい声出ること、ないじゃないですか? ほかの人なら、「うわ、歌うまいな」とか「すごい声が伸びるなあ」っていう表現はできるんですけど、奇妙くんの場合、何がどうすごいのか説明できないくらい気持ちいい声やから、これは一回紐解かんとあかんと思って、ずっと見てて、ある日「やっぱ顔と首の関係かな」っていう答えに行き着きました。この顔の小ささのわりに首が太いんですよ。その、奇跡的な脊髄のつながりっていうのがあるんじゃないかな、と。この声を説明するのはそこぐらいしかないぐらいいいってことです。それか、ネッシー見たぐらいすごいっていうのかの、どっちかです(笑)。説明できないですもんね、奇妙礼太郎の声のどこがどういいのかっていうのは。この声はなかなか聴けないですね、生きてて。

「家で自分で『思い出したくないし』『後悔してるし』って泣けるぐらいまで作れたら、曲としてあり」(Sundayカミデ)

ーーで、奇妙さんがSundayさんの曲を歌いたいという感じる魅力というのはーー。

奇妙 :僕、3年ぐらい前に大阪から東京に引っ越してきて……Sundayさんは大阪に住んではって、テシマも東京に引っ越したの最近やから、僕、ひとりで東京にいたんで。Sundayさんとしゃべったりするのってすごい楽しいことなんで、定期的に会って話を聞いてたいなと思ってて、やってるバンドです。

ーーすみません、曲の魅力についてうかがったんですが。

Sunday:会いたくなるくらいいい曲、ってことよね?

奇妙:それでいいです。

ーーよくないです(笑)。なぜSundayさんの曲を歌いたくなるのか、どうぞ。

奇妙:いや……言葉も曲自体も構造がものすごく単純なんですけど、単純さが単純に伝わるんじゃなくて……誰もが使ってるブロックで、見たことないような新しいものやけど普遍的なものが作られてるというか。土しか使ってないのに、ガウディみたいになってるというか。ほんとに、難しい単語とか一切使ってないの、すごいなと思って。みんなもっといろいろ言いたがるじゃないですか、歌詞で。自分がそうなんですけど。それで自分の曲の格を上げようとするとか、そういうのと無縁な曲で。……たぶん若い時の方が恋愛とかするし、そっちに寄せて作ったりとか……まあ、簡単に言うと、なんかに媚びたような歌詞ではない…………違うなあ(笑)。

Sunday:いや、よかったんじゃない? 今の。媚びてないってこと? だけどあれよね、たとえば、いい歳してこんな恥ずかしい言葉、よく歌詞にするな、みたいなとこは、普通に考えたらある、自分でも。

奇妙:そう、普通「好き」とかそういう単語が出てきたら、たいがいそっちに寄るんですけど、なんかそれと全然無縁な。

Sunday:なんか、いい曲を作ろうとしてないというか。

奇妙:そうそう。好かれたいとか、こう言ってるから買ってほしいとか、そういうのはまったく入ってないな、っていう。自分と向き合った結果が書かれてるだけで、そこが好きなんですよね。で、自分の曲なんですけど、聴いてる人がちゃんと主役になってて。甘ったるいことを言うわけでもなく、淡々と、真摯なものが4分間に詰まってる。そういう歌は、ほかにあんまないですよね。なんかねえ、「大学生ぐらいの奴らを狙いすましてんなあ、この人らの曲」みたいな……別にそれをなんとも思わないですけど、それと一見似てるような気がするけど、明確に違うんですよね。

Sunday:曲は、単純にしか作ってないんで。誰でも一発聴いたら歌えるぐらいのメロディしか使わないんで。使うコードを増やしていいポップスを作るとか、そういうのも一切省いて。実際に自分で作って自分で歌って、家で自分で泣ける……「思い出したくないし」とか「後悔してるし」って泣けるぐらいまで作れたら、曲としてあり、みたいな感じにしてるんで。それとメロディとの兼ね合いがよければ、人に覚えてもらえるだろうし。前にジャズのバンドをやってた頃は、いろんなコードを駆使して曲を作ってましたけど、ワンダフルボーイズで自分で歌うってことになってからは、自分で歌うものはできればコードひとつ、最大で4つ、それぐらいあれば充分みたいなルールを先に決めて。自分はいろんなコードを歌う歌唱力はないから、しっかり自分の思ったことが書けて、メロディにできてたらそれでいい、という。

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