メジャーデビューアルバム『メジャー』インタビュー
SANABAGUN.高岩遼と岩間俊樹がめざす、音楽による革命 「リスナーの耳の鮮度を上げたい」
「俺らはメンバー全員が主人公」(岩間俊樹)
ーーそして、高岩遼のヒップホップサイドのアプローチとして、代官山LOOPで椎名純平さんのオープニングアクトを務めたのがSANABAGUN.の前身になったとか。
高岩:そうです。そのとき誰かフィーチャリングでラッパーに客演してもらいたいと思って、俊樹に連絡したんです。
岩間:そのときいたSANABAGUN.のメンバーは遼、(澤村)一平、(髙橋)紘一、(谷本)大河ですね。それからいろんな繋がりでメンバーが増えて今の編成になっていったんですけど、俺が最初に客演してできた曲が「M・S」なんです。
ーー初期の代表曲と言える楽曲ですね。岩間くんのそのときの感触は?
岩間:遼から「こういう題材で、こういうラップしてほしい」というリクエストがあって。それを受けてリリックを書いて、軽く合わせて本番みたいな感じだったんですけど、俺はバンド演奏でラップすること自体が初めてだったので。率直にこいつらレベル高いことやってんなって思いました。
高岩:俺は俊樹と一緒にやったライブの感触がよくて。このメンバーで何かやりたいなと思いましたね。
岩間:ライブの1週間後くらいに「正式にメンバーになってほしい」という連絡がきて。でも、今でこそラッパーがクラブから抜け出さないことに違和感を覚えてるんですけど、当時は俺自身の視野が狭かったから。クラブでツーターンテーブルをバックにライブをして成り上がらなきゃ意味ないという固定観念が強かったんです。だから、どこかでバンドでラップすることに抵抗があって。でも、自分が一目置いてる遼がいるならいいかなという軽い気持ちで入ったんです。ソロ半分、バンド半分で活動しようかな、くらいの感覚で。それからほどなくしてSANABAGUN.というバンド名が付いて、その名義で初めてやった横浜のKing’s Barのライブでみんな「あ、これすげえイケてるんじゃない?」ってムードになったんですよね。(小杉)隼太もその日が俺らと一緒にやる最初のステージで。
高岩:そのライブを観に来たのが(櫻打)泰平だったり。それが2013年の2月か3月ですね。
ーー渋谷でストリートライブを始めたのは?
岩間:そのライブの1ヶ月後くらいですね。あのころはトゲしかなかったよね。
高岩:そうだね。
ーーそれは日本の音楽シーンの現状に対して向けられたトゲとか?
高岩:いや、そういうことではないですね。日本の音楽シーンはダサいとはずっと思ってますけど、奢らないことが俺らの信念でもあるんです。だから、尖る相手も他のミュージシャン相手じゃなくて、ライブハウスでノルマを払ってライブをするシステムにふざけんじゃねえよって思いながらストリートに出て。ストリートでやってると音楽をなめてくる社会の縮図みたいなものを感じるんですよね。だから、街の雑踏に対しても尖ってたし。「俺らがこんだけカッコいい音楽鳴らしてるんだから、聴けよ」みたいなマインドで。初日から150人くらい集まってましたけどね。それに対しては「やっぱりいけんな、俺ら」とも思いつつ。
ーーでも、聴いて何かを感じたからには対価としての金を落としていけよ、っていう。
岩間:そう、そういう尖り方でした。自分らが鳴らしてる音楽は間違いなくカッコいいし、このままやっていけば少しずつ環境が変わっていくことは薄々メンバーの頭にあったと思うんです。だからこそ、周りのミュージシャンがどうこうよりも、自分たちだけのことを考えてましたね。自分らの音楽を煮詰めていくことが先決で。
ーーメジャーレーベルとサインを交わすことも想定内の未来でしたか?
高岩:そうですね。メンバー各々がプレイヤー思考で、俊樹だったらジャパニーズヒップホップにおけるクラブシーンの狭さに違和感を覚えたり、俺だったら女性ジャズボーカリストが金持ちの変なオヤジと寝てなんちゃらかんちゃらみたいな状況が超ダセえなと思っていて。集客は全然できないけどピアノが超上手くて、リスペクトはされてるのに金にならない人がいたりとか。そんなんじゃいつまで経っても高級車には乗れねえじゃねえかって思うので。だからこそ、俺らがメジャーと契約して、その先にしっかりメイクマネーしてるビジョンは持ってましたね。そのビジョンはSANABAGUN.が始まる前から持ってたメンバーも多いと思います。
ーーこれはまさにストリートで養われた求心力でもあると思うんですけど、SANABAGUN.はどんなイベントに出演しても一見のお客さんを全部もっていくじゃないですか。絶対的な音楽力があるうえで、ハードボイルドなすごみとユーモアが成す緩急がその肝だと思ってるんですけど。自分たちではその求心力の核をどう思ってますか?
岩間:俺らはメンバー全員が主人公だと思っていて。
高岩:そう。泥くせえ「ワンピース」みたいな。それプラス、まさにユーモアじゃないですかね。ジョークというか。自分らの音楽もお客さんのことも客観的に見て遊んでる。あと、みんな粋な面構えとか素振りがなんたるかはわかってると思います。それがダンディズムに繋がってるのかもしれないですね。
ーーあと、ちゃんとストリートカルチャーを体感した者だけが発せられる威圧感というかね。人を殴る痛みも、殴られる痛みも知ってる人たちの音楽だなと思う。
高岩:ありがとうございます。他のバンドマンやミュージシャンが俺らのことをどう思ってるかは知らないですけど、何か文句あるなら面を出して直接言いにこいよとは思いますね(ニッコリ)。そういうバンドではありたいと思ってます。だから、俺らが“平成生まれのレペゼンゆとり教育”って謳ってるのもそこなんですよ。
ーーというと?
高岩:ゆとり世代って、協調性がないとか、自己啓発能力に欠けてるって言われがちじゃないですか。けど、俺らはそれとは真逆だと思うんですよね。団塊の世代のおっさんたちが、俺らの世代のことをゆとり世代と名付けたとしたら、俺らは真逆のベクトルにあるゆとり世代だと思うんですよね。それもまたユーモアになるというか。だからこそ、ゆとり世代を背負ってやろうと思って。