SKE48は“外向き”の象徴=松井玲奈の卒業をどう乗り越えるか 『TIF』好演で見せた新境地を読む

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 SKE48が、8月12日に18thシングル『前のめり』を発売した。杉山勝彦作曲・若田部誠編曲の表題曲は、卒業を目前にしたセンター松井玲奈にあてて秋元康が作詞した楽曲になっている。さらにカップリング曲には、SKE48在籍日数をタイトルにした松井のソロ曲「2588日」(TYPE-D盤に収録)が収められ、またシングルTYPE-C、D盤付属のDVDには松井のドキュメンタリー「2588日。Documentary of 松井玲奈」が前後編に分割されて収録されるなど、トータルとして彼女の卒業に焦点を当てた作品になっている。松井珠理奈とともにSKE48の象徴だった彼女がグループを去ることの大きさがうかがえる。

 この卒業は松井珠理奈と松井玲奈の二大巨頭をシンボルにした、長らく揺らぐことのなかったSKE48というグループのバランスを決定的に変える。昨年末の『12月のカンガルー』で北川綾巴、宮前杏実が表題曲のセンターを務めたように、形式的に二人の松井が中央から退く機会こそ少しばかりはあったものの、グループ総体のパワーバランスに地殻変動が起こるようなことはほぼなかったといっていい。しかし、松井玲奈の卒業によって、SKE48のかたちは否応なく変化の時を迎えることになる。ひとつには絶対的な中心を担ってきたメンバーが松井珠理奈一人になることで、他メンバーとの位置関係がどのようになるのかという関心もあるだろう。しかし、松井玲奈の卒業の意味は、グループ内での選抜メンバーやフロントメンバーの編成への影響にとどまらない。

 二人の松井はSKE48のなかで、ある対照的な機能を担っている。つまりAKB48グループ内部で躍進していく志向の象徴として松井珠理奈が一方にあり、また一方に「SKE以降」のキャリアを想定しつつ48グループの外に目を向けることの目立つ松井玲奈がいるという対照である。AKB48の選抜総選挙で一位を奪取することを強く願う珠理奈と、48以外を含めたアイドル界全体を半ば無邪気なファンとして俯瞰する玲奈とは、現在のグループアイドルシーンへのスタンスに関して、あるコントラストをなしていたように思える。ただし、SKE48というグループとして強くあらわれていたのは、前者すなわち内向き志向の方だった。その志向のひとつの成果が、毎年の選抜総選挙でSKE48が多くのメンバーを順位圏内に送り込むような強さだった。

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