『ROLLYS ROCK CIRCUS』インタビュー

ROLLYが語る、70年代日本ロックへの深すぎる愛情「カバーアルバムを作るため家にスタジオを作った」

 

 ROLLYが、70年代日本のロックの名曲をカバーしたアルバム『ROLLYS ROCK CIRCUS 〜70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光〜』をリリースした。洋楽・邦楽・歌謡曲など過去のあらゆる音楽への膨大な知識と偏愛を総動員し、超大量の元ネタを駆使し、どこかで聴いたことあるけどどこにもないような、100%懐かしいネタだけど順列組み合わせで新しさを生み出すような、そしてもしその元ネタを一切知らなくても「かっこいい!」と飛びつけるような(ここ大事。だからすかんちは90年代にあんなにブレイクしたんだから)トゥーマッチなロックンロールを生み出し続けてきたのがROLLYであり、近年もそのスタンスを貫きながら活動中だが、外道に始まりフラワー・トラヴェリン・バンドやはっぴいえんどや四人囃子等を経てセルフ・カバー“恋のマジックポーション”(これだけ90年代の曲)に行き着くこのアルバムは、全体的に、彼にしては、オリジナルに忠実に作り上げている気がする(それでもいろいろネタが入っているし十二分にトゥーマッチだが)。

 カバーやコラボやオリジナルアルバムのリリース、ミュージカル等の舞台や各種プロデュースや客演などなど、密度とスピードをどんどん上げながら走り続ける本人に、この作品の制作動機を語っていただいた。なお、インタビュアーが口を挟む間ほぼなし、な勢いでしゃべりまくってくださいましたので(これも昔から一貫しています)、わずかな質問もすべて削って、ひとり語り形式にまとめました。(兵庫慎司)

「僕はね、歌謡曲も洋楽も、全部の音楽を均等に聴いていたクチなんです」

 1990年にデビューしまして、今年で25周年。それを記念して、日本の70年代ロックのトリビュート・アルバムを出さないか、というお話を、キングレコードの夏目さんという方からいただいたのが、去年の12月ぐらいでした。それはもう願ってもないチャンスなので、1秒以内に「それはぜひやらせてください」とお返事をしました。

 夏目さんは外道のディレクターで、僕はここ2枚ほどの外道のアルバムには、1、2曲参加していて。外道のレコーディングというのはとてつもなく変わってて、行くまで録る曲を教えてくれない。で、スタジオに行って──アナログ24チャンネルのマルチで録ってて、24トラックのうち、僕に残されたトラックは1トラックだけ。で、加納(秀人)さんが「曲を1回だけ聴かせる!」って言って1回聴いて、アナログでワントラックだからテイクワンで決めないといけない。という、とてもスリリングなことをしてるんですけど(笑)。

 そして、今作の選曲をするにあたり、夏目さんと都内某所でお会いして、僕の自宅にお招きして、自分の持っている70年代日本のロックを、ああでもないこうでもないってかたっぱしから聴きまくって。3時ぐらいまで聴いたかな。もうほんと、昔の少年ですよ。椅子に座って聴くんじゃなくて、ふたりでステレオの前で正座して(笑)。

 でも、夏目さんは今まで僕のやってきたことにすごく詳しかったのと、音楽知識がとても豊富で、「この人は話が合うなあ」と思って。その日は20曲ぐらいまでしぼって、さらにしぼりにしぼってこの11曲にしました。

 外道は、今言ったみたいに、最近僕は参加していて。フラワー・トラヴェリン・バンドは、最近ドラムの和田ジョージさんとキーボードの篠原信彦さんと私と原田喧太、ベースが鮫島秀樹さんで、フラワー・トヴェリン・バンドの曲をやるバンドを組んでいるのね。はっぴいえんどは、一昨年ぐらいから年に一回、鈴木茂さんとふたりでコンサートをしてるんです。

 四人囃子とあんぜんバンドは、四人囃子の森園勝敏さんと岡井大二さん、あんぜんバンドのベースの長沢ヒロさんとサックスの中村哲さん、そこに私が入って「あんぜん囃子」というバンドをやっていて。それからムーンダンサーの「アラベスク」は、かつて青山の戸川昌子さんのライブハウス「青い部屋」でシャンソンのリサイタルをやった時に、この曲を、去年亡くなった小川文明さんのピアノで歌ったんですね。それを聴いた厚見さん(玲衣・この曲の作曲者)から電話がかかってきて、「小川くんのピアノもいいんだけどね、レコーディングする時は俺にやらせてくれ」って。

 僕、この70年代日本のロックのカバー集の前に、『グラマラス・ローリー〜グラム歌謡を唄う』っていうアルバムを出したんですね。それは、70年代って洋楽のファンがいて、歌謡曲を聴く一般の人がいて、そのふたつが混じっているところがすごく少なかった。歌謡曲を聴く人は洋楽は聴かないし、洋楽を聴く人は歌謡曲をバカにしてるし。だけど僕はね、全部の音楽を均等に聴いてたクチなんですよ。

 というのも、当時の歌謡曲の作曲家って、元ネタが洋楽なのがすごくあるのね。安西マリアの「涙の太陽」、バックの演奏を聴いてると、あれはディープ・パープルなんですよ。フィンガー5の「個人授業」は完全にグラムロックだし、「夏のお嬢さん」(榊原郁恵)はスージー・クアトロの「ワイルド・ワン」だし。

 歌謡曲とロックの関係性に当時から……「『個人授業』はもうちょっと変えればゲイリー・グリッターみたいになるやん」と思ってたわけ。いつかそういうのやりたいなあと思ってたので、これの前は歌謡曲をグラムロック風に演奏するというアルバムを作った。

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