ジャニーズWEST、NEWS、乃木坂46…J-POPの歌詞に使われている“風諭法”のテクニックとは?

――トレンドの変化が目まぐるしくなった昨今、時流を上手く掴み、風諭で詞に反映させるコツはあるのでしょうか。

zopp:「先を読む力」が必要でしょうね。政治的なこと、小さいトレンドの種など、火が付きそうなものをくみ取ってすぐに作品へと昇華しなければ、時代を捉えた風諭法は駆使できないと思います。

――情報を自分から拾いに行くことが大事なのですね。

zopp:ただ単に言葉を紡いだり、キャッチーなフレーズを考えるだけではなくて、「時代性」を読まないといけないということも作詞家に求められる条件です。だって、流行のアレンジはあるけれども、流行のメロディーというのは、あまりないじゃないですか。だからこそ作詞というものは、とても重要なんですよ。

――ちなみに、「バリハピ」でほかに工夫した点はなんでしょう。

zopp:僕が詞を書く際、よく一つの歌の中に「キーアイテム」を用いることがあります。それは「青春アミーゴ」の<携帯電話>だったり、NEWSの「Sweet Martini」という曲ではマティーニというお酒を題材にしたり。で、今回は「手」をキーアイテムとし、使い方によって正義にも悪にもなるよ、という言い方で楽曲のテーマを肯定しています。

――なぜ歌詞のなかに「キーアイテム」を用いるのでしょうか?

zopp:わかりやすいキーアイテムを使うことによって送る側と受け取る側がシンクロしてメッセージが伝わりやすくなるという効果があると思っていて。例えば、直近でリリースされた楽曲だと、亀田誠治さんと大原櫻子さんが共作した「真夏の太陽」や、秋元康さんが作詞した乃木坂46の「太陽ノック」。これは太陽がキーアイテムとなっていて、これを使ってアーティストと曲を聴く人とのつながりを近づけようとしています。

――楽曲内で普通に使っている固有名詞と、「キーアイテム」の違いとは?

zopp:一度しか出てこないのは、その瞬間だけ出したかったアイテムであり、決して「キー」にはなっていません。平歌にもサビにも、タイトルにまで登場して始めて「キーアイテム」と言えるのだと思います。そうすることで、どうやっても耳に残りますから。以前だったら、そういうキーアイテムは「海」が多かった気がするんですけど、今年はそこまで見かけませんね。あと、キーアイテムをピンポイントにしすぎると、時代が移り変わったときに古くなりやすいという点が挙げられます。たとえば国武万里さんの「ポケベルが鳴らなくて」とか、小林明子さんの「恋におちて -Fall in love-」の<ダイヤル回して 手を止めた>って、鳴るポケベルも無ければ回すダイヤルもありませんから(笑)。あと、文明がアナログからデジタルになるにつれ、「スイッチを入れる」とか、どんどん所作が画一化されていっているので、作詞家としては困りものですね。

――何かを“している感”があればあるほどシチュエーションも限定され、風情もでるのでしょうか。

zopp:そうなんです。以前、秋元康さんが「作詞家の仕事というものは、歌手にいかに遠回りをさせるかということが重要」だと話していたのを聞いて、まさにそうだと思いました。でも、ものがあり余るくらい溢れている現代において、珍しいものや遠回りをしたものというのは、すごく昔のものか、逆に新しすぎることしかなくなってきているんです。すなわち、比喩を使ってまで伝えたくなるようなことが無くなってきた。だから90年代~00年代には直接的な歌がウケたし、近年はそこに飽きたリスナーが直接的でない歌詞を求めるようになっているという傾向もあると思います。

■zopp プロフィール
1980年2月29日生まれ
アメリカ、マサチューセッツ州ボストンの大学でコンピューターテクノロジー専攻。
16歳の時、初めてのアメリカ留学を経験。その時に勉強の延長線上で様々な海外アーティストの歌詞を翻訳している内に、作詞の世界に魅せられ作詞家を目指す。作詞活動と並行して、作詞家の育成(zoppの作詞クラブの講師)、ネーミング等を考える(コトバライター)、テレビ出演など、多岐にわたって活躍の場を広げている。
2013年11月11日に、初小説「1+1=Namida 」(マガジンハウス)を上梓し、小説家デビューを果たす。

zoppのYouTubeちゃんねる Z-POP https://www.youtube.com/channel/UCf_rqxQaXEQnal-RJ9FcDdA

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