POLYSICSハヤシが語る、ウルトラ怪獣への偏愛「オレが曲にしないとな、という使命感はあった」

「こいつふだん何食って生きてるんだろう、みたいなぶっ飛んだライブを見るほうが好き」

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ヤノ(Drums、Voice)とゴモラⒸ円谷プロ

——震災のときにバランスが崩れかけたというのは……。

ハヤシ:……オレ、ほんとこういう話ってしないんだよね……。

——すいません。知ってます。そこであえてお聞きしてます。

ハヤシ:うん……そのときはね、「ファイトイス!」っていう言葉をみんなで考えたの。「自分たちのできることを精一杯やっていこうと思います、ファイトイス!ファイトイス!」って。それぐらいしかできなかったかな。そこで自分がMCで何かを語るっていうのは想像できなかったから。でも言わなきゃいけないのかな、とか、そういうのもあったし、でもポリシックスだし。ここに来ている間だけはイヤなことがあってもーー「イヤなこと」で済まされない問題だけどーーここにいる間だけは楽しい時間を約束しますよってバンドなのに、そこで現実に戻るようなキーワードを言う自分がまったく想像できなかったし。DEVOだったらどうするのかな、ユーモアを交えて言うかな、とか考えたりしてね。ポリシックスってやっぱり楽しいバンドであるわけだから。そこで自分たちの存在意義というのは改めて意識したかな……やっぱり自分はそういうところで喋らない方がいいと思ったし。そんな状況でも「Let's ダバダバ」とか言ってると楽しいよね、と言いたいかなあ……。

——こういうご時世だから震災に関連したことを言ったほうがいいかもしれないけど、でもポリシックスはそういうバンドじゃない、というせめぎ合いの結果、やはり自分はそういうことは言いたくないし、言うべきでもないと思った、ということですね。

ハヤシ:うん、まさにそうです。あのう……すげえ思うよ、マジで。特にMCとかは。いろんなバンド見てると。うん。

——MCで現実に戻されて興ざめすることが結構ある。

ハヤシ:(笑)あるある。もっとバカでいいんじゃないの、ロックなんだから、って。こんなに楽しい空間なのに。それは震災関係なく、最近特に思うことだけどね。俺たち、MCで損してるなって。

——たとえばどういう?

ハヤシ:今度飲んだ時に言いますよ(笑)。なんていうか……「ひとりひとりが音楽の力を信じて、手を取り合って」とかさ。「絆を大事に」とかさ。そういうこと言えると盛り上がるんだろうけど、できないからさ。そんなことより、こいつふだん何食って生きてるんだろう、みたいなぶっ飛んだライブを見るほうが好きだな。こいつどういう生活送ってるんだよ、でもライブは最高っていうほうが断然好き。そうじゃない?小野島さんも!

——(笑)まあね。メッセージ的なことを言うとか、あるいは自分の内面や苦悩を赤裸々に音楽に反映する。そういう表現はエンターテインメントになりえないんでしょうか。

ハヤシ:それはエンターテインメントとして成立すると思うよ。そうやって作られてきたロックの文化がずっと続いてきたわけじゃないですか。そこで社会に対して中指を立てることからパンクが生まれたわけじゃない? すべてをぶち壊せと。常にその時代その時代にスタイルを変えてカウンターをくらわすような音楽として続いてきたわけだから。ただオレの場合素直に中指を立てる人ではない、というか。思いきり中指立てるほど、オレにとってカッコ悪いことはない。中指立ててるけど、立ててる指がドリルになってるとか(笑)。そういう感じで遊びたい。

——クスッと笑えるような。

ハヤシ:そうそう。ユーモアって大事だからさ。DEVOだって要はそういうこと言ってたわけじゃないですか。テクノロジーが発達しているけど逆に人類は退化しているよ、っていうコンセプトじゃない?でもそれを青筋立てて3コードでやるんじゃなくて、変態なアレンジで、壊れたロボットみたいに演奏する。そこでひょうきんなシンセを入れて、歌だかわかんないようなボーカルがシャウトしてる、ていうのがかっこいいわけで。プラスチックスだってそうじゃない? この社会がおかしくなってますよってメッセージをシリアスに伝えるような音楽は好きじゃない。プラスチックスみたいなチープなリズムマシーンや愛嬌のあるシンセの音に乗せて素っ頓狂な声で警告する。そういうやり方のほうが自分にあっていると思う。たとえばどんな過激なメッセージだって、みんな同じようなストレートなスタイルの音楽で出てきたら、それはもう過激でもなんでもない普通のことであって。そこからは何も生まれないと思う。それは今回これを作ってる時に思ったな。『ウルトラマン』って、実はすごくメッセージ性が強いじゃないですか?

——そうですね。特に『ウルトラQ』は強い。

ハヤシ:まさにまさに。そういうメッセージをリアルなドキュメントで見るより、謎のいびつな生物が現れて、実はそれが未来からの警告だった、みたいな。あ、オレはこっちだなやっぱり、と思いましたね。そういうフィルターを通して訴えかけてくるほうが、自分にはもっと突き刺さるなと。

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