the chord『by your side』インタビュー

後藤健二氏追悼アルバム『by your side』が伝える、生前のアート活動と愛すべき人柄

 後藤氏の訃報を知った際は、ある程度の覚悟は決めていたものの、大きなショックを受けたという両氏。近しい人間を失った者として心を痛める日々が続いたが、後藤氏の机に残されたメモが、ふたりの背中を押した。

「はじめは、いまの段階で作品を発表することに対する躊躇もありました。しかし、彼の机に『A Daily Prayer』の歌詞がびっしりと書かれたブルーの大きなポストイットを見つけ、『いつものように早くやろう』と、天国から後藤さんが語りかけているように感じ、制作を決心しました。彼は僕以上に、the chordの作品を世に広めたいというモチベーションを持っていたので、それなら来場者が限られる個展ではなく、多くのひとが手に取りやすいよう、CDパッケージによる音楽作品にすることにしました。ジャケットは、CDを作ろうと思った時点で、健二が現地で出会った少女のマラックちゃんが描いた花の絵にすることに決まり、その後、彼が10年間にわたって人権についての講義を行っていた玉川聖学院の生徒たち70名余りも、それぞれに花の絵を描いてくれました。アート作品で彼の魂に献花しようというイメージです。『by your side』はアーティストの個人的なノスタルジーだけで創られたものではなく、聴く人、見る人と一緒に創り出す現在進行形のドキュメントアートとして捉えて欲しい。まさにthe chordの最新作として相応しい内容になっていると思います」(こうづ)

the chord + shizuka / A Daily Prayer

 多くのひとが制作に協力的であることに、こうづ氏とshizuka氏は、同作をリリースすることの必要性を日に日に感じていったという。「今回の事件で心を痛めたひとびとの拠り所となる作品にしたい」と、こうづ氏は続ける。

「今回の作品は健二への追悼の意味合いもありますが、我々が前を向くためのひとつのけじめでもあります。彼のことは一生思い続けるでしょうが、拠り所としての作品を世に出すことで気持ちを整理し、生きている人間として次に進まなければいけない。そして、この作品を経たうえで、the chordとしての活動も続けていきたいと思っています。the chordにはもともと、“和音”がどんどん増えていくように、というコンセプトがあって、僕と健二だけのユニットというわけではありません。今後はほかのジャーナリストやアーティストにも参加してもらい、現実を伝えるジャーナリストと、ファンタジーを作るアーティストの架け橋となるようなプロジェクトにしていきたいですね」(こうづ)

 年内にはthe chordとして、展覧会も企画しているという両氏。人並みはずれた行動力を持ちながら、敬虔なクリスチャンという一面を持ち、その生涯を虐げられている人々の存在を世界に伝えることに捧げた後藤氏の意思は、the chordを通して多くの人に受け継がれていくに違いない。

(文=編集部)

■関連情報
Gallery chord
http://sacredchord.jp/
http://www.gems-seeker.com/

■リリース情報
『by your side』
the chord + shizuka
発売:6月24日
価格:¥1,500

〈収録曲〉
1. AVE MARIA
2. A Daily Prayer
3. Standing On The Promises

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