姫乃たま「地下からのアイドル観察記」

アイドルとファンが抱える“心の闇”の正体とはーー地下アイドル・姫乃たまが考える

 一方で、私が気になっているのは、地下アイドルに負けず劣らず、ファンが病んでいることです。私生活の悩みではなく、地下アイドルのことで悩んでいるファンが、とにかく多いのです。一度など、悩み過ぎてイベントの際に、地下アイドルから叱られているファンを見かけたこともあります。地下アイドル側は仕事なので簡単に辞められないのは分かるのですが、どうしてファンは精神を病みながらもイベントに足を運ぶのでしょうか。私はこの問いにぶつかった時、アイドルイベントへ行くことの俗称が「推し事」である意味を理解しました。

 イベントは地下アイドルだけでなく、ファンにとっても仕事なのかもしれません。給料も終点もなく、頑張れば「認められる」ことだけが存在する労働と考えれば、アイドルブームの異様な熱狂が理解できる気がしました。地下アイドルから名前を覚えられたり、舞台上から目が合ったりすることで、「認められたい」欲求を解消しているとしたら、地下アイドルがファンからの歓声を浴びて、「認められたい」欲求を解消しているのと同じことです。そして、その欲には終わりがありません。

 しかし、実際のアイドルファンに、精神を病んでまでファンを続ける理由を聞くと「もともと病んでるからアイドルオタクになった」という答えが返ってきました。アイドルファンになって病んだわけではないと言うのです。どんな疲れや、難しい議論も、歌って踊る女の子たちの前では意味を持たないというのが、彼の持論でした。どうして、そこまで地下アイドルに熱狂するのか、普通の女の子と地下アイドルの差とは、一体なんなのでしょう。

 私は今でも、キスマークをつけて愚痴をこぼす女子高生と、体の傷を増やしながら笑顔でいる地下アイドルとの距離が、どれほど離れているのか掴めずにいます。私自身のことも、地下アイドルでなければ病んでいなかったのか、病める人間だったから地下アイドルになったのか、今となってはわかりません。ただし、スポットライトを浴びる職業だからこそ、不安定だった精神を、より濃い影として捉えられていた感覚はあります。そのため、私は地下アイドルだけに、特別深い闇があるとは思っていません。

 「アイドルブームはいつ終わると思いますか」と聞かれるたびに、人々の心が不安な限り完全に終わることはないと、本当は思っているのです。

■姫乃たま(ひめの たま)
地下アイドル/ライター。1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。

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[ブログ]姫乃たまのあしたまにゃーな http://ameblo.jp/love-himeno/
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