柴 那典が全国ツアー『おいしい葡萄の旅』を分析

サザンオールスターズが見せた“無敵のエンタメ性”とは? 東京ドーム公演レポート

 

 そして「やりたいからやろうと思って」「古い曲も楽しんでやれるようになってきた」と、過去の曲も披露する。「栞のテーマ」など往年のヒット曲や「ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)」などライブの定番曲だけでなく、どちらかと言うとレアなアルバム収録曲もたっぷりと披露。80年代や90年代、その時々の時代のモードと並走してきたバンドの姿を見せる。

 MCでは「最近の世の中についていけなくなりまして――」と何度も冗談めかして語っていた桑田佳祐だが、キャリアを通じてこれほどまでにポップミュージックの最前線に居続けたバンドは他にいないだろう。「大衆音楽の粋、ここに極まれり!」という『葡萄』のキャッチコピーを改めて実感する。

 ラスト、桑田佳祐は「東京ドームでまたやろうね」と呼びかけ、恒例の“旅の記念写真”として5万人と記念撮影。そして「みんな、死ぬなよ! 頑張ろうな!」と叫び、ステージを降りた。その最後の一言も、強く胸に刺さった。

 全11箇所23公演のツアーは8月17日、18日の日本武道館まで続く。今のサザンのツアーが「無敵のエンタテインメント」を体感する場になっていることは間違いなさそうだ。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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