FORWARD・ISHIYAが歌舞伎町パンクフェスをレポート
新宿歌舞伎町のど真ん中で開催 パンクフェスティバル「KAPPUNK」の可能性とは?
「KAPPUNK」の海外のフェスとの相違点として特筆すべきものがドリンクにある。日本のライブハウスではチケット料金の他にドリンク代という謎のシステムが存在する。今回はLOFTとACBの協力の元、入場時のドリンクオーダーも無く、イベントコインが発売され、そのコインを購入すればどちらのライブハウスでもドリンクが均一料金で飲むことが出来た。
こういった試みは日本ならではであり、屋外で飲酒が出来る日本の特権のように思う。ドリンクシステムによる収益などもあるだろうが、そこの垣根も取り払い協力してくれたLOFTとACBも、老舗ライブハウスならではの心意気を見せ、このイベントの成功に尽力してくれた。イベント主催者達が、ストリートの人間の気持ちや観客であるパンクスの気持ち、出演者であるバンドの気持ちに寄り添っているからこそ、こういった目線があるのだろう。複数会場でのイベントを快適にしてくれたこのシステムは、観客に対して気持ちのこもった対応だと拍手を送りたい。ドリンクコインも3枚で1000円と非常に低価格であり、この試み自体が既存のライブハウスシステムに対する「パンク」なアティテュードといえよう。
アジア最大の歓楽街である新宿歌舞伎町をパンクスがタムロする光景は、パンクスとして人生を歩む者にとってたまらなく痛快で楽しくなるものだ。かといって街でめちゃめちゃなことをすれば存続が出来なくなるばかりか、協力してもらったライブハウスにも迷惑がかかるため、スタッフも歌舞伎町という特殊な街でパンクス達の誘導を初め、大変な努力をしてこのイベントを盛り上げていた。スタッフのチームワークも抜群で、このイベントに関わる人間達のパンクに対する愛情が溢れているイベントだった。
日本のアンダーグラウンドシーンは、海外と比べて非常に希有な交流を持っている。西洋でパンクスとスキンヘッズ、サイコビリーが一堂に会することなどあり得ない。あるとしても会場は違う場所で、観客同士が同じ場所を共有しないような計らいが取られていたりする。東南アジアでは同じパンクス同士がいがみ合う悲しい事実もある。しかし、日本ではハードコアもスキンズもサイコビリーも仲間であるためバンド同士も交流があり、友人同士でもある。
そういった日本だけが持つシーンの独自性は、世界のアンダーグラウンドシーンにも衝撃を与え、パンクフェスティバルというものの在り方さえ変える力を持っているのではないだろうか。
今回は初回のため、出演していない日本を代表するパンク、ハードコア、スキンズ、サイコビリー、ヘヴィーメタル系のバンドがある。次回は来年4月29日30日〜5月1日の3DAY’Sを予定しているとのこと。今後、日本でしかあり得ないフェスが確立されていくことを願う。
■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST
(写真:MOMOKO/LAZYPINK)