tofubeatsが考えるアウトプットのバランス感覚 「常に『この人は変化したいんだ』って思われたい」

20150327-tofubeats8.jpg

 

「変化していくことを求められる人間が一番良い」

――『STAKEHOLDER』は、ゲストボーカルが居ないことも、前作までの流れと外仕事を受けての揺り戻しというか、少し内に篭った感じに受け取れた要因のように思います。

tofubeats:この作品は初めて関西で、しかも自宅とマスタリングスタジオの往復だけで作ったからかもしれませんね。あと、ゲストボーカルに関しては、これを作っている時に呼びたい人がいなかった。歌ってもらうときは、基本的に宛書で書くんですけど、やっぱりSMAPさんと仕事をしたりすると、感覚が狂っちゃって、もうゲストに誰を呼んでいいのかわからなくなった(笑)。でもそれが良い方向に作用したんだと思います。

――作品では表題曲「STAKEHOLDER」の前に、「SITCOM」という楽曲がありますよね。アートワークを含めて、『フルハウス』(海外ドラマ)オマージュですか?

tofubeats:『フルハウス』もそうだし、人数的には『愉快なシーバー家』。その曲のイントロ終わりに入ってる「ピロリン♪」って音は『愉快なシーバー家』をサンプリングして自分で弾き直しました。デザインしたスケブリ(杉山峻輔)も、その二作の融合を目指していたみたいですよ。

――原点回帰的な意味合いもあったと。そういう意味で、もう日の目を見ることが無いと思っていた「window」の再録は意外であり嬉しいものでした。

tofubeats:これ、歌詞が二文字だけ変わっているんですけど、極力、原曲と変わらない形にして再録しました。良い意味で「成仏させることが出来た」という気持ちですね。入れようと言ってくれたチームの方に感謝です。

――「She Talks At Night」は、サビで歌謡ポップのような歌モノから一気にミニマルな展開になっていく曲ですね。

tofubeats:あれは、歌のあとの部分がサビなんですよ。1番と2番の歌詞が一緒なのも、歌が「普通のポップスと思いきや」と思わせるためのフリになっているんですよね。音像的な違和感に関しては、「衛星都市」も、ノイズとベースがバカデカいわけですが、僕はこういうバランスが悪いと思わない。こういう言い方をすると天邪鬼に聞こえるかもしれないけど、「なぜ声が前に出ていないとだめなのか。ベースが良いから前に出てるだけなのに、なぜダメなのか」という考え方です。

20150327-tofubeats5.jpg

 

――「T.D.M feat.okadada」は「ディスコ製造者(The Disco Manufacturer)」というテーマがあって、曲の流れから一番激しいものを想像していましたが、ポップな楽曲に仕上がっていました。

tofubeats:この曲は、元ネタがKISSの「Beth」なんです。okadadaさんが「これすごい好きなんだよね」ってライブ映像を見せてくれたんですけど、「音合せをしていて帰れないんだよ。ごめんね、ベス」という内容の良いバラードで、その後に炎が噴き出して激しい曲をやるという内容で、「最高っすね、これやりましょう」となって。ちょうどTuxedoのアルバムも発売されるタイミングだったので、Mayer Hawthorneを聴きながら「この感じで『Beth』をやったらどうなのか」と考えて作ったキメラ構造の曲。

――ラストトラックの「衛星都市」は、『First Album』収録の「衣替え」に近いものを感じました。女性ボーカルでも映えそうというか。

tofubeats:まさに「衣替え」のパターンを意識したもので、後々はほかのミュージシャンに歌ってもらいたいと思っている曲です。だからブックレットには「tofubeatsボーカルバージョン」とわざわざ書いていて、これが「将来だれかとやりたい」という意思表示でもあります。今回の作品だと、「window」はリリース関係なく女性コーラスバージョンを作りたいと考えていますが、あまり気軽に協力をお願いできる女の子が周りにいないし、そういう風に簡単に依頼しちゃうのはあまり好きじゃないからやらないんですよね。もし、神戸とかで仲良いボーカリストの女の子がいたら、がらっと変わると思いますけど、友達があんまいないし、それも個性かなと(笑)。Sugar's Campaignの2人が面白いやり取りをしているのを見ると「二人組っていいな」って思ったりすることもありますけど、違うからこそ同じ括りの中に居れるわけだし、仲良くできるわけなので。それに、曲を書くときに「絶対100点じゃないといけない」という考え方はない。だって、来年と去年の趣味が違うのは当然で、そのとき良いと思っているものが来年リアレンジされていても全然不思議に感じないですもん。「水星」も、実は毎年ちょっとずつアレンジしていますし、そういうやり方が向いているんだと思います。

――ライブでの反応を探っていって、さらに現場向きのアレンジに磨かれていくわけですね。

tofubeats:そういうのは意識してるので、「STAKEHOLDER」もどんどん変わっていくでしょうね。実際、同じバージョンばかりだとかけている自分が飽きてきますし、お客さんに何回も同じものを聞かせるのも失礼だと思います。okadadaさんが「『この曲を絶対かける』みたいな人になったら、もう終わり。いつも違うことをやっていること自体を求められないとダメだ」って言っているんですが、たしかに、変化していくことを求められる人間が一番良いし、やりやすいんだと思います。もちろん、「水星」とかはこねくりまわされると聴いている側として腹立つでしょうから、そこは難しいですけど、バランスを取っていきたい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる