2ndアルバム『As I am』インタビュー
SCOTLAND GIRLが語る、地方バンドのメリット SHIORI「理想の形でバンドができている」
滋賀県在住のメロディック・ハードコア・バンド、SCOTLAND GIRLが約5年振りとなる全国リリースアルバム『As I am』を、横山健率いるPIZZA OF DEATHのレーベル内レーベル、Jun Gray Recordsより3月4日にリリースした。疾走感のあるシンプルなスリーピースのバンドサウンドに乗せて、エモーショナルなメロディを奏でるスタイルはまさに正統派ハイスタキッズだが、SCOTLAND GIRLは男女のツインボーカルによって、さらにメロコアの可能性を追求。ポップな仕上がりとなった本作は、全国のCDショップでも一推しされるなど、インディーシーンを中心に評判を呼んでいる。全国各地で精力的にライブ活動も展開しているSCOTLAND GIRLだが、彼らが今も地元・滋賀県を拠点にしている理由とはなにか。そして、メロコア・ブームをリアルタイムで体験していない彼ら3人にとって、横山健やHi-STANDARDはどのような存在なのか。東京・恵比寿でのライブを直前に控えた彼らにインタビューを行った。聞き手は音楽誌を中心に活躍する編集者の上野拓朗氏。(編集部)
SHIORI「今も普通に会社で働いてます」
――結成時から今みたいなスタイルのサウンドだったんですか?
GORI:そうですね。オリジナル・メンバーは僕だけですけど、最初は男3人の編成で、当時からやっていることはほぼ変わらないです。ちょうど7年前。SHIORIがバンドに入ったのは、結成してから半年後くらいかな。
SHIORI:私は短大に通っていて、当時3ピースのギャルバンで活動してたんです。メロディックで速い曲をやるバンドだったんですけど、そのバンドでSCOTLAND GIRLと対バンする機会があって、その時に初めてGORIと知り合って。で、その頃のSCOTLAND GIRLはベースがサポートメンバーだったというのもあって、ある時、GORIから一緒にやらないかと誘われて、いろいろ考えた結果、ギャルバンの方を解散してこのバンドに加入しました。
RYO:僕は当時18〜19歳でSKA FREAKSというバンドで活動していて、SCOTLAND GIRLに加入したのは3年くらい前です。ただ、同じ地元のシーンの一員として昔から仲良しだし、いつも遊んだりとかしていたので、常に身近な感じではありました。
――キャリア的には中堅ですけど、RYOさんが入るまでは大変な時期もあったそうですね。
GORI:前任のドラマーが脱退して、1年間はサポートのドラマーでライブを続けていたけど、なかなか苦しかったです。
SHIORI:感覚的にはめちゃめちゃ長かったですね。サポートで叩いてくれる人がいるとはいえ、正式なメンバーがずっと見つからない。正直しんどいなって思う時もあったし、その度にGORIとお互い励まし合って、“いつか絶対に見つかる”って。それで1年後くらいにRYOがアプローチしてきてくれたって感じです。
GORI:今思えば、バンドを辞めるタイミングはいつでもあったなって感じなんですけど、ギリギリの状態で続けていたところに救世主が現れた(笑)。
RYO:ハハハハ。
SHIORI:2人だけの時は絶望感に襲われる時もあって(笑)。
――GORIさんは滋賀県浜大津のB-FLATというライブハウスで働いてるんですよね。そういう環境であれば、いろんなツテで新メンバーもすぐ決まりそうなイメージがあります。
GORI:いや、滋賀県のバンド人口は少ないですからね(笑)。特にドラムは滅多に見つからないです。サポートしてくれるバンド仲間のドラマーはいっぱいいるんですけど。
――じゃあ、メンバーがずっと見つからない間、“このままバンドを辞めて、ライブハウスの仕事一本に絞ってやっていこう”とか考えたりしましたか?
GORI:そうですね。バンドを続けるかどうかっていう選択肢の間を、1年間ずっと行ったり来たりしてました。まあでも、踏ん切りつけずに良かったです。そのおかげで今があるので。
――SHIORIさんは?
SHIORI:私も当時は考えましたよ。バンドの世界から遠のいて、例えば家庭を持ったりとか、そういうことまで。今も普通に会社で働いてます。一般事務の仕事なんですけど。
――日常を営みつつ音楽活動をするのが、バンドの醍醐味だったりしますよね。
GORI:両方大事やと思うんですよね。
――じゃあ、一時期はそのバランスが危うい感じだったんですね。
GORI:はい。グラグラしてましたね(笑)。
――RYOさんはその様子を近くから見ていたと。
RYO:はい。サポートドラムでライブをしていた時、まさか自分が加入することになるとはぜんぜん考えてなくて。2人なのにライブを続けてスゲーな、でも大丈夫かなって。でも、ふと思ったんですよ。“俺が入りたい”って。しかも、サポートドラマーが何人だっけ?
GORI:3人替わって。
――そんな時にRYOさんが現れたと。
GORI:救世主ですね、ホンマに。
GORI「今の目標は、滋賀のバンドだけでライブハウスを埋めること」
――その苦しい時期に突入する直前、KEN BANDから対バンのオファーをもらったんですよね。
GORI:はい。ちょうどSHIORIの就職が決まったばかりで、そのライブが平日だったということもあって、結局断ってしまったんです。3.11の震災があった直後くらいで、そこからはしばらくバタバタしていました。
――でも、RYOさんが加入した後、KEN BANDから改めて対バンドのオファーがあったんですよね。
GORI:うれしかったです。一回断ってしまったから、もうオファーはないだろうなって思っていたので。
SHIORI:健さん(Ken Yokoyama)からの誘いを断るなんてありえなかったんですけど、仕方なく当時はお断りさせていただいて。でももう一回お誘いいただいて、ほんと泣くほどうれしかったです。
――やっぱり健さんのオファーを断ったってことで、当時はかなりショックだった?
SHIORI:かなり落ち込みましたね。前の職場と今働いてる職場って違うんですけど、その時の会社はライブがあっても平日は絶対に休みませんって宣言して入ったんです。だから、土日中心でバンドを続けるつもりでいて。でも就職した途端、自分のひとつの夢であったKEN BANDとの対バンを断ることになって、“これでいいのかな?”って正直思ってしまって。その後も平日に大きいオファーをもらうことが度々あって、だんだん“ホンマにこのままでいいのだろうか?”って思えてきて。でも、その会社は本当にいい職場で、もうこんな職場には出会えないだろうっていうくらいだったから、すぐには辞められなくて。その間、バンドを優先させるのか、今の職場を取るのか常に天秤にかかっている状態でした。それで最終的に、バンドは今しかできないと思って会社に事情を説明して理解してもらって、職場の人たちも“頑張ってな!”って送り出してくれたんです。そこからフリーターになって、平日もガツガツ動けるようになって。そしたら、たまたま今の職場にも出会って。今は正社員として雇ってくれてるんですけど、平日にライヴがあったら休ませてくれるんですよ。まさに神職場で(笑)。
――すごい!
SHIORI:ライブとか何か用事があったら前もって言ってくれたら休んでいいよって。だから、私にとっては今すごく理想の形でバンドができてるんです。
――GORIさんが働くB-FLATは地元では昔からあるんですか?
GORI:そうですね。去年で15周年を迎えました。KEN BANDがそこでライブをやったのは1回だけだと思います。8年前くらいじゃないですかね。
――お客さんが入るライブっていうのは、メロディック系が多いんですか?
GORI:今は滋賀県自体、あまりお客さんが入ってないですね(笑)。
――キャパはどれくらいなんです?
GORI:250人ですね。平日はほとんどやってないです。ライブは週末ですね。
――ライヴハウスとしての営業以外は?
GORI:スタジオをやってます。ステージの上で練習してもらって。
――そこで練習したりするバンドの数は結構多いんですか?
GORI:バンド自体は多いのかもしれないですけど、学生の文化祭のノリやったりとか。俺らみたいなスタンスでやってるバンドはめっちゃ少ないですね。両手で数えられるぐらいしかいないです。
――でも、GORIさんは滋賀から出て大阪なり東京なり、別の場所に拠点を移してバンドをやろうとは考えなかったんですか?
GORI:はい。今もないです。東京で生活しないんですかって、よく言われるんですけど(笑)。
SHIORI:滋賀は田舎で落ち着くってのもあるし、東京とかやったら日帰りでも車で移動できる。そういうのにも慣れてるし、もし用事があったら自力で行けるからいいかなって。
――滋賀から東京まで車でどれくらい?
GORI:5時間半から6時間くらいですね。
――行けなくはない。
GORI:はい。これが九州とか北海道だったら考えますけど。
SHIORI:滋賀にいた方が西にも行きやすいですからね。九州とか。琵琶湖もあるし、日本の中間といえば中間やからいいかなって(笑)。
――自分たちが先頭に立って地元のシーンを盛り上げていきたい?
GORI:その気持ちは強いですね。今のところの目標は、滋賀のバンドだけでライブハウスをソールドアウトさせるっていうことで、最終的にはフェスみたいな形にしたいです。滋賀県でメロディックのバンドはもう俺らだけなんですよ。
SHIORI:昔は結構いてたんだけど。
――今はどういうバンドが多いんですか?
GORI: Lenny code fiction、ウルトラタワーとか。ギター系のバンドが結構多くて、一緒にやる機会はあんまりないですね。メロディック系のバンドはホンマにいないです。
――じゃあ、地元出身の有名なバンドというと誰になるんですか?
SHIORI:UVERworldです。
GORI:tricotやシナリオアートも滋賀なので、すごく仲いいです。ただ、2組とも今は東京に住んでるので。
RYO:だから、滋賀でやってる後輩のバンドが、僕らを見て“滋賀で頑張っても全国で通用するんだ”って思ってもらえたら、めちゃくちゃうれしいです。
GORI:それはめっちゃ思う。
――ライブには、中高生ぐらいの子も来てくれたりとか?
SHIORI:たまに。
RYO:ちらほらやな。
――女性ヴォーカルだし、女の子のお客さんも多いのでは?
SHIORI:年齢問わず女の子は結構来てくれます。
RYO:最近めっちゃ増えたよな。お客さんもそうですけど、プレーヤーも女の人が増えましたね。
SHIORI:本当に。私たちみたいに男性メンバーの中に女の子がいるっていうバンドも増えてきていて、前よりバンドに親しみを持ってもらえてるのかなって思います。