FORWARD・ISHIYA『LOOKING FOR JOHNNY ジョニー・サンダースの軌跡』映画評

伝説のロッカー、ジョニー・サンダースの生涯とは 世界初のドキュメンタリー映画を観る

NEW YORK DOLLSのプロデューサーを務めたマルコム・マクラーレン

 この頃のニューヨークはどこでもドラッグが手に入り「72時間で50人がヘロインで死亡」というポスターまで街角に貼られるような時代。しかし、それがニューヨークという街の偽らざる一面であり、数々の最高な音楽やバンドを生み出して行った一つの理由でもあるのではないだろうか。

 NEW YORK DOLLSにしろ、THE HEARTBREAKERSにしろ、その後のソロ活動にしろ、ジョニーの与え続けている影響は計り知れない。それをドラッグと切り離して考えることは不可能だと、この作品を観れば誰でもわかる。だからと言って、ジョニーの真似をしてドラッグをやれば最高のソングラティングやギタープレイが出来るということではもちろんないのだが。

 筆者はジョニー・サンダースをあまり知らなかった。代表曲である「チャイニーズ・ロック」「ボーン・トゥ・ルーズ」「オール・バイ・マイ・セルフ」や、アルバム『L.A.M.F』は知っているが、その程度だ。ジョニー・サンダースに憧れた人間が、ジョニー・サンダースの真似をして、はき違えたルーズさでいることが好きになれなかった。しかしこの映画を観て、そんな人間が出て来てしまう理由もわかる気がした。なにがあっても、ジョニーはいつでもジョニーであり、最高の魅力で周囲に影響を与え続けていたのだろう。

NEW YORK DOLLSの黄金期メンバーだったシルヴェイン・シルヴェイン

 結婚し子供も生まれ、バンドも順調にいっている時期もあったが、やはりドラッグで家庭は崩壊する。ここまでしてもジョニーはドラッグから離れることができない。何度かドラッグを断ち切ろうとするが、すぐに元通りのジャンキーに戻る。どんなに周りの人間が助けてくれてうまくいきそうになっても、ジョニーは自らそれを破壊していく。それはドラッグのせいなのだろうか? それともジョニーの持つ何かがそうさせるのか……。

 天才的なギタープレイとソングライティング。そしてスキャンダラスでいながらも、最高にカッコ良く、優しさが滲み出てしまう愛すべきクソジャンキーの一生。謎に包まれた死の真相にも迫る『LOOKING FOR JHONNY~ジョニー・サンダースの軌跡』は、彼を知る人はもとより、誰の心にも深く静かに響いてくるものがあるのではないだろうか。

■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST

『LOOKING FOR JOHNNY ジョニー・サンダースの軌跡』

■映画情報
『LOOKING FOR JOHNNY ジョニー・サンダースの軌跡』

4月25日 新宿シネマカリテ・モーニング&レイトショー 全国順次公開

公式サイト

監督:ダニー・ガルシア
製作:アラン・ハウザー(Jungle Records)
出演:ジョニー・サンダース/シルヴェイン・シルヴェイン(ニューヨーク・ドールズ) レニー・ケイ(パティ・スミス・グループ)/ボブ・グルーエン(写真家) テリー・チャイムズ(ザ・クラッシュ、ハートブレイカーズ)/アラン・ベガ(スーサイド) ピーター・ペレット(オンリー・ワンズ)/サミ・ヤッファ(ハノイ・ロックス) ビリー・ラス(ハートブレイカーズ)/マルコム・マクラーレン
2014 年/98 分/スペイン/英語/モノクロ・カラー/16:9/ドキュメンタリー
©2014 Chip Baker Films / Jungle Records All rights reserved.

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