乃木坂46における「君の名は希望」と「制服のマネキン」の重要性ーー杉山勝彦の作曲力を読む
これら2曲がファンやそれ以外の楽曲愛好家に受け入れられたことにより、乃木坂46は“楽曲が良い”アイドルとしても広く知られていった。また、杉山以外の作家がその後手掛けて採用された楽曲にも、「制服のマネキン」や「君の名は希望」の影を追いかけているようなアプローチがみられることから、その影響力の大きさが伺い知れる。
ではなぜ、杉山が2013年3月リリースの『君の名は希望』以降、「僕がいる場所」「ひとりよがり」が2015年1月リリースの『透明な色』に収録されるまで、乃木坂46への楽曲提供を控えていたのか。その答えは、現在彼が力を注いでいるUSAGIにある。
USAGIは、年間200本ものストリートライブを行っていた上田和寛の歌声を、偶然新宿の路上で聴いた杉山が一目惚れし、それまでの作家活動を投げ打ってまで組んだ音楽ユニットだ。デビュー前には『ミュージックドラゴン』や『中西哲生のクロノス』など全国のテレビ・ラジオ50局でパワープレイを獲得して注目を集め、2014年の1月に『イマジン』でメジャーデビュー。USAGIはその後も『Hello / USAGI~不昧なストーリー~』『ここから』とコンスタントにリリースを続け、2015年1月19日に赤坂BLITZで開催したデビュー1周年ワンマンライブはチケットが完売するなど、徐々にその才能が世間に認知されつつある。
そんなUSAGIは3月18日に4thシングル『好きをこえたヒト』のリリースを控えており、先行してリリックビデオも公開されている。同曲はUSAGIにとってシングル表題曲としては初のラブソングで、杉山が手掛けるストリングスアレンジとキャッチーなメロディーや、人間味あふれる上田の熱唱が一段と胸に響く楽曲だ。赤坂BLITZのステージで初ライブ披露された。
2015年、『好きをこえたヒト』でステージに立つところから活動をスタートさせたUSAGI。作曲家として多大なる功績を残した杉山だが、2015年はUSAGIとしての飛躍にも期待したい。
(文=中村拓海)