柴那典が“熱狂の背景”に迫る

BABYMETALはなぜ「現在進行形の神話」となり得たか? さいたまスーパーアリーナ公演を分析

 

 しかもメジャーデビューを果たした2013年の初頭まではまだ架空の物語、フィクションだったそのストーリーは、そこから徐々に現実と交わり始めた。まずはフェスへの出演を契機に「メタル四天王」とされるメタリカ、スレイヤー、メガデス、アンスラックスとの共演も実現。楽屋でメンバーと一緒に撮った写真もSNSで発信された。さらに新曲「Road of Resistance」ではイギリスのメタルバンド、Dragon ForceのSam TotmanとHerman Liとのコラボも実現した。つまり、今のBABYMETALのストーリーは海外のメタル界の大物も巻き込んだ「現在進行形の伝説」となりつつあるわけだ。

 そして、BABYMETALのライブで最も強く印象に残るのは、その音楽としての圧倒的なクオリティだ。SU-METALの歌声は、あれだけの爆音をバックにしながらもパワフルかつ清らかに響く。演奏は「神バンド」と呼ばれるメンバーが担い、迫真のプレイを繰り広げる。超絶なソロを見せる場面も多数。楽曲についても、様々なメタルへのオマージュを詰め込み、いわゆる捨て曲のようなものを一つも作らないプロデューサーKOBAMETAL氏の気概が満ちている。

 この日のステージも1曲目「メギツネ」から本編ラスト「イジメ、ダメ、ゼッタイ」まで、あっという間に感じられるような展開。MCは相変わらずないものの、「さいたまスーパーアリーナ、スクリーム!!」などと観衆を煽る場面が増え、2万人が一体となる瞬間が多数あった。終始異様な熱気に包まれていた。

 

 「紅月-アカツキ-」や「悪魔の輪舞曲」のようなSU-METALの歌唱力を活かしたエモーショナルな曲、「おねだり大作戦」や「4の歌」のようにYUIMETAL&MOAMETALをフィーチャーしたキュートでラウドな曲と、実は一辺倒ではなくバリエーション豊かな楽曲がセットに並ぶことも、BABYMETALの持つ魅力の源泉になっている。この日の序盤に披露されたタイトル未定の新曲は、「ギミチョコ!!」に通じるテイスト。ドラムンベースのリズムを活かしたハードコアかつ疾走感あふれるサウンドは、同曲を提供したTAKESHI UEDAが率いていたTHE MAD CAPSULE MARKETSの名曲「Midi Surf」あたりに通じるものも感じる。

 そして、アンコールの最後に披露されたのは、もう一つの新曲「Road of Resistance」。昨年11月のロンドン公演で初披露されたばかりのこの曲は、すでに巨大なメタルアンセムになっていた。途中からは客電がつき、明るくなったフロアで2万人の「Wow〜」という大合唱。そして「We are!?」「BABYMETAL!」のコールアンドレスポンスで終了。2時間に観たない公演時間だったが、大きな満足感と共に帰途についたファンがほどんどだろう。

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