Czecho No Republicが手にしたシンセサウンドの新境地とは? カラフルなサウンドスケープの原点を分析

 エレクトロ~シンセポップの大波が押し寄せた00年代後半以降、メンバーにシンセ担当を含むバンドは急激に増え、その中からサカナクションやSEKAI NO OWARIなどがトップバンドへと上り詰めたわけで、もしかしたら「チェコもそっちに行ったか」と思う人もいるかもしれない。実際、後追いのような形でシンセやダンサブルな要素を加えていくバンドもいるように思うが、生演奏が魅力のバンドがエレクトロニクスの割合を強めたときは、バンドの状態が黄色信号だったりするパターンも多い。しかし、チェコが目指しているのは決してダンスミュージック的な方向性ではなく、ノルウェーのTeam Meや、アイスランドのMumといった、北欧の大所帯バンドのカラフルなサウンドスケープであることは前述のとおり。この差がとても大きいことは、強調しておくべきことのように思う。

 本稿ではここまでシンセサウンドに注目して書いてきたが、「Oh Yeah!!!!!!!」は序盤こそアニメサイズに合わせたシンプルな「イントロ、A、B、サビ」の構成ながら、後半は定型からどんどん外れていくトリッキーな展開が見事だし、八木作曲の「Sunday Juggler」は、「Animal Collective風ミュージカルハードコア」といった感じの暴走ナンバーで、砂川も含めた4人のボーカルが入り乱れるなど、「声」の生かし方もかなりの工夫が凝らされている。つまり、あくまで「他にはないサウンド、他にはない楽曲」に至るための段階のひとつとして、今は主にシンセに興味が向かっていると考えるのが正しいはずで、ある程度シンセを突き詰めたとしたら、今度は一転ストリングスやホーンなど生の管弦楽器に興味が行く可能性も十分あるし、その自由度の高さこそがチェコの魅力だとも言えるだろう。

 ちなみに、先日筆者が行ったインタビューで、彼らは冗談っぽく「そろそろまた2人メンバー増やそうかなあ」なんてことを言っていたが、より作り込まれた今のサウンドをステージ上で忠実に再現するには、確かにもうちょっと人数が必要かもしれない。Team Meは6人、Mumは8人、今年のフジロックで圧巻のライブを披露したArcade Fireのステージには、サポートメンバーも含めて総勢12名が入り乱れ、楽器をとっかえひっかえしながら、様々な楽曲を演奏していったが……果たして、チェコの未来はいかに?

(文=金子厚武)

関連記事