David Bowie『Nothing has changed』 リリース特別企画
坂上 忍が語る、デヴィッド・ボウイの魅力「変化に対して勇気を持ったアーティストだ」
デヴィッド・ボウイのデビュー50周年を記念したベストアルバム『NOTHING HAS CHANGED 〈DELUXE EDITION〉』が11月19日にリリースされる。1964年のデビューシングルから、2013年の『THE NEXT DAY』まで収録された今作は、ロックヒストリーを代表するデヴィッド・ボウイを知る上で、重要な1枚だ。今回は、今年8月の『FNSうたの夏まつり2014』で「レッツ・ダンス」を披露し、話題になった坂上 忍さんにインタビュー。長年のボウイ・ファンである坂上さんにデヴィッド・ボウイの魅力を訊いた。
「こんなにおしゃれで品のある変態っているんだ」
坂上 忍(以下、坂上):その前に「堂本兄弟」(5月)という番組に声をかけられたときに唄ってくれないかと言われまして。候補曲を5曲提出してくれということだったんですが、視聴者の方がよく知ってる邦楽の方がいいのかな、と思いながら候補を出したんですね。しかし、ぼくは基本的に邦楽をよく知らないので、1曲だけボウイの「レッツ・ダンス」に差し換えて提出したんです。測るわけじゃないんですけど“どうせ、こういうの選ばないんでしょ”って気持ちで書いたら、プロデューサーさんが同年代ということもあって、「レッツ・ダンス」でお願いしたいって言われたんです。それでちょっと喜んじゃって、調子に乗って唄っちゃったら、FNSにも出てもらえないかって言われて。もう、最悪ですよね(苦笑)。だって、歌手のひとばっかりのなかでねぇ。それで、そのプロデューサーさんが慰めの言葉でぼくに言ったのが“去年は三谷幸喜さんが唄ってくれましたから”って。ああ、ぼくはその枠なんだって思いましたよ(笑)。それで大分気が楽になって、やらせていただいちゃいました。
――反響はいかがでしたか?
坂上:アッコさん(和田アキ子)は、びっくりしてました。会場についてアッコさんの楽屋に挨拶しに行ったんですが、“何でお前が来てるんだ”って言われて(笑)。アッコさんも大先輩ですけど、あの年代で洋楽に対する強い想いのようなもの、レイ・チャールズが大好きな方ですからね。だから、ぼくがデヴィッド・ボウイを唄うということに対して、非常に驚かれていましたし、とても偉いと言われました。
――ロックとの出会いを教えてください。
坂上:4つ上の兄の影響で、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、レインボー、チープ・トリックなんかを盗み聴きしていました。それで、洋楽ってカッコいいなって思って「ロッキング・オン」とか「ロッキンF」などの雑誌を買って、最初はマネから入っていきました。それで小林克也さんの「ベストヒットUSA」が大好きで、あの番組でデュラン・デュランとかカジャグーグーやU2を知って衝撃を受けたんです。それでイギリスのロックに傾倒していくなかでボウイとも出会ったんです。デュラン・デュランもそうだったと思うんですけど、ボウイに対するリスペクトを持ったひとたちに興味を持ったんですね。それ以前からボウイは知ってましたけど『アラジン・セイン』のジャケットのイメージばかりでどんな音楽をやってるかはあまりわかっていなかったんです。でも、彼らを通してそんなすごいひとなんだって気づいて、聴くようになってびっくりしたんです。例えるとするなら演劇的とでも言うんですかね。お芝居と音楽の間くらいの感じがして。それからは音楽性がどうこうと言うよりも、デヴィッド・ボウイはデヴィッド・ボウイなんだっていう認識になりました。そこで『レッツ・ダンス』(1983年)が出て、さらにやられちゃいましたね。
――ボウイのどこに魅かれたんでしょう?
坂上:まず、カッコいい。そして金髪。歯並びの悪さ(笑)。服装。それと以前はグラム・ロックって言われてましたけど、ニューウェイヴっていう言葉と存在に魅かれちゃいましたね。それまではディープ・パープルとか聴いてたんですが、彼と出会って、こんなにおしゃれで品のある変態っているんだ、って思いましたね。中性的って言うのか、舞台役者っぽかったんですよね。それでデヴィッド・ボウイという存在に強烈にはまっちゃいました。それがあって映画『戦場のメリークリスマス』(83年)だったんで、それでまたびっくりしたし、確信を持ったんです。あ、やっぱりこのひとはミュージシャンとか役者というくくりじゃなくて、エンターテイナーと言うかアーティスト、芸術家っていうタイプのひとなんだって思いましたね。
――お好きな楽曲は?
坂上:ぼくが最初に聴き始めたのは『レッツ・ダンス』と『トゥナイト』(84年)からですが、そのあと遡って全部聴きました。それでもトータルで一番好きなのは「チャイナ・ガール」です。あの“しーっ”って指を唇にあてるやつ(プロモーション・ヴィデオにも写っている)。ボウイの曲には歌詞じゃなくて“しーっ”とか“ハー”とか“ウー”っていうのがよくあるんですけど、そういうところが何かお芝居っぽくて。それはCDで聴くよりも映像で観た方がわかりやすくて、役者の匂いが漂ってきますね。歌い方にしても、語りかけたり、ひとり二役をやったりとかはミュージシャンのひとがやる芝居のレベルではないですよね。そこがほかの方とは一線を画すところじゃないですかね。
――お好きなアルバムは?
坂上:それはもう『レッツ・ダンス』ですよ。一番好きですね。これに入っている「モダン・ラヴ」も好きですね。あのイントロを聴くとしびれますね。『トゥナイト』に入っている「ブルー・ジーン」や「ダンシング・ウィズ・ザ・ビッグボーイズ」も好きです。タテ乗りの曲が好きですね。