けみおは男子版きゃりーとなるか? “UZAI”を世に広めるポップアイコンの行方

けみお&アミーガチュ『ケロケロ』

 デビュー曲『ケロケロ』では、作曲に奥田民生、アレンジに小西康陽という異色の顔合わせが実現。サンバ調のリズムにのせたユニークな歌詞が印象的な1曲に仕上がっている。正直、歌唱力には疑問が残るものの、“けみおワールド”とも言うべき濃い世界観は唯一無二。不思議な勢いすら感じさせる。ちなみにバックダンサーとコーラスを務めるアミーガチュも『HR』の人気読モたち。スペイン語で女の子たちという意味だそうで、けみおとはことあるごとに共演している。

 彼がこれほどまでに支持を得られた理由は、ひとえに自己プロデュース力の高さ。自分がどんな顔をすれば人は笑ってくれるか、どんな衣裳でどんなキャラクターを打ち出せば話題になるか、TwitterやツイキャスなどSNSメディアで支持を獲得してきたなりの計算がそこにはある。きゃりーぱみゅぱみゅが話題になり始めた頃を思い出してほしい。彼女の場合も、独特のファッションや変顔が満載されたブログが人気を呼び、デビューのきっかけのひとつとなった。けみおの場合はさらにそれを進化させ、リアルタイムで自身と交流する場を提供。女子高生たちにとって身近な存在となることに成功したのである。

 そしてもうひとつ、けみおの強みとなっているのが“ウザい”ことだ。彼のハイテンションな芸風は一見するとかなり強烈。否定的な意見も多いことだろう。しかしそれでも、臆することなく自分のキャラを押しだせるのも、“ウザい”からゆえ。我が道を進もうと決意したとき、常日頃言われてきたであろうこの“ウザい”は、けみおにとって最強の武器となった。さらに考えてみれば、原宿のカルチャー自体が、ウザさと紙一重。過剰で毒々しく、底抜けに明るい。強引に「これが原宿」と自ら名乗ることで、世界からも注目される文化となりえたのである。きゃりー誕生以降に生まれた、より純度を増した原宿的存在がけみおなのである。

 きゃりーぱみゅぱみゅは、ポップアイコンとしてワールドワイドな存在になるにつれ、本人の発言やキャラクター自体はどんどん薄められていくこととなった。だからこそ、けみおに期待するのは、自身の持ち味を活かしたスターへと上り詰めてくれること。“KAWAII”のネクストステージとして、“UZAI”が世に知れ渡る日がやってくれば、それこそ「クール!」なのにと思う。

(文=板橋不死子)

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