THE PRIVATES、延原達治が語るバンドとロックンロールの30年「明日もやりたい、というのが一番」

「俺の歌はメッセンジャーとしての歌ではなくて、観察者」

--その、今回のニューアルバム『Les beat hi-fi mono』ですけれども。DISC1がオリジナルでDISC2がカバー集で、全部まとめたコンセプトというのは、バンドの基本であるリズム&ブルース、ロックンロールを思い切りやったという感じですか。

延原:まず今回のアルバムを30周年のメモリアルにして昔を振り返ろうとか、そういう気持ちは全然なかった。オリジナルのDISC1に関しては、レコーディングの準備が始まった時点から、新しいプライベーツのアルバムを作ろうという感じでやったんですよ。でも全部ができあがってDISC1の曲順を決めて、聴いてみると、全然意図したわけでもないのに30年間の足跡が音楽になっていた。一番最初の入口だった60年代のブリティッシュ・ビートも、ガレージやフリークビートの世界も入ってるし、20代に入ってから新しく聴きだしたソウルやスウィート・ソウルもちゃんと入ってるし、ニューオーリンズみたいな香りがする曲もある。そういった意味ではノンテーマだけど、ノンテーマだったからこそ、できあがってみたら30周年にふさわしいアルバムになりましたというところがあって。

--DISC2もすごいですよね。柴山俊之、加藤義明、花田裕之、下山淳、仲井戸麗市、Dr.kyOn、ザ・クロマニヨンズのヒロト&マーシー、チバユウスケ、岡本雅彦、THENEATBEATSにOKAMOTO's…ゲストが本当にすごい。これ、もしかして延原さんが自分で声をかけたんですか。

延原:そうそう、電話して、カバーをやるからぜひ参加してもらいたいんですって。みんなふたつ返事でOKしてくれて、うれしかったです。自分たちが30年間で知り合った最高に尊敬できるカッコいいロックンローラーばかりで、夢のような時間でした。選曲はいろいろ考えて、ブルース、リズム&ブルース、ロックンロールがいいという話になったんだけど、50年代60年代のカッコいい曲はビートルズ、ヤードバーズ、フー、キンクスとかがだいたいやってるから。だったらそのへんのバンドたちがカバーしてない曲を選んで、しかもすごいマニアックなものではなくて、マディ・ウォーターズだったらストーンズがカバーした曲と同じアルバムに入ってる曲とか、ハウリン・ウルフの代表曲だけどあんまり誰もやってない曲はどうだい?と。

--すごくいいロックンロールへの入口だと思います。今の若い世代なら、ちょっと掘れば見つけることができるし。

延原:本当に名曲ばかりだし、恐怖心はありましたよ。しかもこんなにすごいミュージシャンたちと一緒にやるわけだから、最近作った曲を十何曲もDISC1に入れて、比較されても困りますとか思ったんだけど(笑)。でも全然自信を持って並べられたから、ほっとしましたという気持ちはあります。

--DISC1のオリジナルに関しては、歌詞についてもぜひ言いたいことがあるんですよ。ロックンロールだぜ楽しいぜ、という曲がメインですけど、1曲目「エレベータNo.9」が“都会の一人暮らし”という描写から始まって、ラストの曲名が「最後まであきらめるな」で、全体を通してすごくメッセージの強さを感じたんですよ。みんなちゃんと生きてるかい?というような。やっぱり言葉の面でも、言いたいことはありますよね。

延原:うん。俺はもともとそういうことについてはシャイなほうだし、なるべく時代のことは感じたいし、常に言いたいことがある自分でいたいとは思う反面、そういうのって粋じゃないよね、という微妙なところがあったりするんだけど。でもね、とはいうものの、こんな時代に生きていて言いたいことのひとつもないなんて、それはおかしいだろ?と思うので。

--ですよね。

延原:メッセージと言ってもらったけど、メッセージという側面から言うと、俺は今回の曲を書いていくうちに、今までよりも言いたいことがはっきりした言葉で盛り込まれたなと思ったんだけど、できあがって聴いてみると、俺の歌はメッセンジャーとしての歌ではなくて、観察者だよなと。こういう時代に生きていて、こういう都会に住んで、そこにいて観察してる人の歌。俺はやっぱり、そうなるんだよね。ただ、通常だったらどこまで皮肉を入れられるか?というところに全力を尽くすのに、皮肉だけじゃ済まない時代になってきてるなという気はします。

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