TOWA TEIが語るポップの定義「ほんの一瞬でもテイ・トウワっぽさが耳に残るようにしたい」

「なんかわからないけど、ひっかかるようなものを作りたい」

ーー軽井沢に家を越したのが2000年の4月だということですが、ちょうどその時期がいろんな時代の節目だったと思うんですよ。

テイ・トウワ:そうそうそうそう。

ーーまりんや小山田君、バッファロー・ドーターの山本ムーグさんあたりと話していると、だいたいそのあたり(2000年前後)に時代の変わり目があって、音楽制作に関する考え方や姿勢が変わってきたという話になりますね。それまでは中古盤屋で誰も知らないネタを血眼でディギングするような、情報の処理の仕方や消費の傾向や速度によって個人のアイデンティティが規定されていたけど、1997年にCD売り上げが頭打ちになって、そういう情報に振り回される情報万能主義的な時代が終わって、ごくふつうの生活者としての内発的でミニマルな感覚が重視されるようになった、と。彼らの音楽もそこらへんを境に大きく変わっていく。同様な変化がテイさんにもあったのではないかと。

テイ・トウワ:なるほどなるほど。ちょうど僕がそうでしたね。僕は1999年から準備を始めて2000年の4月に引っ越したんですけど、ちょうどSWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINEの『TOWA TEI』の制作途上だったんです。ほぼ完成していて、軽井沢に行って仕上げだなと思っていたんですけど、いざ軽井沢で作業を再開したら、どうも違和感があって。当時使ってたREAKTORというアプリがバギー(バグが多い)なこともあって、そこから修正するのに結構時間がかかっちゃって。でも当時はバブルの残り香があったので、当時の事務所もどんぶり勘定で、”まいっか”って(笑)。結局2002年に出ることになりましたね。

ーーでもそれを境目に、よりシンプルな方向に。

テイ・トウワ:そうそう。その反動で、REAKTORを捨てて、倉庫からアナログのマシンを出してきて、ツマミをグリグリするようなフィジカルな方向に立ち戻ったんです。そしてそこで制作用のPCを初めてノートブックにしたんです。新幹線の中でも制作が可能な態勢になった。それがすごく大きかったですね。

ーーより日常に密着したような制作態勢になった。

テイ・トウワ:あとその時、長年使ってたDAWのアプリを変えたんです。メインのシーケンサーを。もう既になくなってしまったメーカーなんですが、僕はそれしか使えないからしつこく使ってた。NY時代はアドバイザーもやってたぐらい使いこなしてたアプリだったんですけどね。で、変えてみたら、それまで使えてた機能がいろいろ使えなくなってた。

ーーああ、それは結構大きいですね。

テイ・トウワ:大きいですよ!

ーーでもそれはある意味諦めがついて、ふんぎりがつけやすくなりますね。

テイ・トウワ:そうですね!かといって『FLASH』(2005年)が『Last Century Modern』(1998年)に比べて打ち込みが貧弱になってるとか、そういうこともないでしょ。

ーー制作環境がフィジカルに、ミニマムに、シンプルになることで、音楽制作に対するアプローチもシンプルに、無駄のないものになったんじゃないでしょうか。実際の音の印象も変わってきてる。ちょうどコーネリアスが『FANTASMA』(1997)から『POINT』(2001)で激変したときと同じような印象がテイさんにもあって。どこかシンクロしてるようなところもあるのかなと思ってました。

テイ・トウワ:そう言っていただけると嬉しいです。

ーー時代の変わり目において、音楽はそれを敏感に反映するものだなと。

テイ・トウワ:そうですね。それはあるんじゃないですかね。僕の場合、人生初田舎っていうのもあると思いますけど(笑)。

ーーそんな中でずっと変わらないテイさんのテイストってありますよね。モダンで都会的でソフィスティケイトされてるし、何よりポップで。

テイ・トウワ:そうですね。インタビュアーの人はみんな聞くんですよ。”近い将来は○多郎みたいになるんですかね”って(笑)。

ーーなんすかそれ(笑)。

テイ・トウワ:シンセパッド音楽みたいになるんですかね、って。なんねえよそんなもん!(笑)。

ーー(笑)そのテイさんのポップ・センスなんですが、ポップであろうという意識は常にあるんでしょうか。

テイ・トウワ:ポップっていうか僕は…“ファンク”でもいいんですけど…たとえば大滝詠一さんとかたまに聞くと、ポップスであろう、王道であろうという強い意志を感じるじゃないですか。山下達郎さんしかり。マニアックなようで最終的には王道のポップスであるという。僕はそういうのとは全然違ってーー今や特殊音楽家だと思ってますけどーー特殊音楽家なりに、TVCFなどで15秒の勝負になった時、ほんの一瞬でもテイ・トウワっぽさが耳に残るようにしたい。なんかわからないけどひっかかるようなものを作りたいんですよ」

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