きのこ帝国、バックドロップシンデレラ、感覚ピエロ……今聴くべき若手実力派バンド12選
puff noide
一度聴いたら忘れられなくなる、榎園稔三の感情を叩きつけるような歌が印象的。真っすぐな歌詞とストレートなバンドサウンドに心を揺さぶられる。言葉で説明するよりも、ただ音と、その叫びを感じて欲しいバンドである。
ストロベリーソングオーケストラ
通称「苺楽團」と呼ばれる彼らは、バンドと劇団を融合させたパフォーマンス集団。寺山修司、江戸川乱歩や夢野久作といった怪奇・奇譚ミステリーの世界を体現し、白塗り・昭和アングラな徹底したコンセプトと、高い演奏力で観客を魅了する。座長であり、怨歌担当(ボーカル)の鬼才・宮悪戦車(ミヤアク センシャ)に、ジャズ・シンガーの顔を持つ月影美歌(ツキカゲミカ)と異鏡朱音(イキョウアカネ)という二人の歌姫が脇を固める。メタルギターとピアノの旋律、演劇を交えたライブパフォーマンスはまさに、“世にも奇妙な見世物小屋”といったところである。
Liquid
ギター、ウッドベース、ドラムの3人組。編成を見れば、ルーツ・ミュージックを彷彿とさせるが、彼らが奏でるのは「古着屋でかかるような音楽」。ブルースでもあり、70年代のクラシック・ロックでもあり、固定的なジャンルというよりも雰囲気重視のセッションを織り交ぜたライブスタイルを重視している。結成は2003年、他アーティストサポートなどの個人活動も盛んに行なっており、そのキャリアとスキルに裏付けされた演奏力は本物。「ロック好きな男たちが自由気ままにやりたい音楽をやっている」バンドだ。
AJYSYTZ(アイシッツ)
音楽レーベルの在り方を問いただすような独自の美学で注目を浴びるKilk Recordsから。和製ビョークの異名を持つ、五阿弥瑠奈率いる5人組バンド。実力と技術に裏付けされた変幻自在な歌声と、生楽器と電子音の混ざったサウンドが、幻想的なノスタルジアを感じさせる。「日本人離れしたサウンド」と安易な言葉では片づけられない世界がそこにはある。英詞と日本語詞のコントラストも美しい。
ここにあげたバンドたちは言わば普遍的な「ポピュラリティー」とは少し離れたところにある音楽であり、クラシック音楽のような守るべき様式美があるわけでもない。しかし、その自由な音楽性の中には、ロックやポップスを進化させる可能性があるのかもしれない。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/twitter