YUKIはいかにして“永遠のガーリー”となったか ジュディマリ時代から最新SGまでを辿る
ソロデビュー第1作目。プロデューサーに日暮愛葉(SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER)を迎え、ロック色を強く打ち出した。PVではスカートの中に手を差し入れる描写が過激だとして放送禁止にする番組もあったほど。ピュアなエロさが炸裂している。この後は『プリズム』といったバラード曲も発表し、ジャンルにとらわれないオリジナルな歌を模索していく。
ビジュアル面でも音作りの面でも、“アーティスト”YUKIの方向性を位置づけた『JOY』以降、楽曲は蔦谷好位置とタッグを組んだダンサブルな楽曲が続く。打ち込みサウンドとYUKIの軽やかな歌声の相性の良さを知らしめた。サビ部分のスプーンをなめまわす仕草がエロいと話題に。ジャケットもヤギを抱いた自身の肖像画で、乳首が見えているというショッキングなものだった。
『うれしくって抱きあうよ』以降、AORからの影響がサウンド面に大きく作用。同時に、“歌うこと”そのものに対するYUKI自身の思いも格段に増したような印象を受けた。また歌詞の面でも、ストーリー性を意識するなどの変化が見られる。PVは加瀬亮との共演。YUKIが男装し、加瀬が女装するという斬新なものとなっている。
そして、ニューアルバムの先行シングルとなる本作。音的には『ランデヴー』(2009年)ごろに戻ったようでもあるが、それはある意味、ここ数年彼女が抱えていた迷いや苦しみから解放されたようでもある(「奈落からはいあがれ」、という歌詞も意味深)。レオタード風の衣裳でダンスを披露している点もどこか吹っ切れたような新しい決意を感じさせる。
独特のファッションやビジュアルセンス、あどけなくも伸びやかな歌声、コケティッシュな愛らしさ。デビュー時のJ-POPシーンを見ても、YUKIの存在はとりわけキャッチーであったし、だからこそ熱狂的な支持者を得ることに繋がった。しかし、当初よりその本質にあったのは“不安定さ”や“危うさ”だ。PVで披露する独特のダンスに見る妙な緊張感など、彼女の作品のそこここに、この“不安定さ”は立ち表れている。一歩間違えればただの奇をてらった表現となりかねない。それをギリギリで成立させているからこそ、唯一無二の世界が生まれるのではないだろうか。
20年間ほぼ変わらない少女のようなビジュアルと、それとは真逆のセクシュアルな表現というアンバランスさもそのひとつ。無防備なエロティシズムは、人の不安を掻き立て目を奪う。これもまた、YUKIが手に入れた強大な武器と言えよう。
かくしてYUKIはデビュー以来ずっと、私たちを虜にし続けている。いかに楽曲や歌唱スタイルが変化しようと、決して完成しない未完成な女の子。セクシュアルとピュアネスが同居する異形の存在。それが永遠のガーリー、YUKIなのである。
(文=板橋不死子)