キーパーソンが語る「音楽ビジネスのこれから」第1回
LD&K大谷秀政社長インタビュー「CDの売上が3分の1でもアーティストが存続できる形を作ってきた」
「音楽が存続するなら、僕は業界の規模が大きくなろうが小さくなろうがどうでもいい」
――大谷さんはレーベルオーナーとして、現在の日本の音楽業界をどう見ていますか。
大谷:この間も日本レコード協会の懇親会というか、決算報告会みたいなものがあったんです。スケジュール帳に「NRJ」と書いてあって、“コレなんだったっけな。あ、レコード協会か”と。レコード会社だから全然いいんですけど、古い名前だなと思っちゃって。日本最大級のエンターテインメント協会なのに、名前どおりやっていることも地味なんですよ。懇親会も話をするだけで。裸踊りのひとつでもやればいいのに、と思っちゃったり(笑)。
レコードっていうところを考えるとダメなんですけど、音楽はなくならないでしょ。音楽がちゃんと存続するなら、僕は業界の規模が大きくなろうが小さくなろうがどうでもいいと思っているんですよ。低コストで音楽を作れるインフラも整ってきたし、インターネットをはじめとして発表の場もたくさんある。誤解を恐れず言ってしまうと、CDというものはスゴい無駄ですよね。もともとデータでやりとりできるものだし、音質に不満があれば技術革新は自然と進んでいく。うちの場合、CD売上自体が音楽事業に占める割合は2割くらいだと思うし、そんなに危惧してないです。音楽業界が危ないというけれど、うちに関していえば「こうなっていくよね、じゃあこうしていこうか」で済むんじゃないかと思ってます。大手メーカーに比べたら、ペイラインも低いですからね。
――CD売上に頼らないビジネスモデルを作って来た、ということですよね。
大谷:昔でいうと「3万枚売れないとペイできない」という時代がありましたけど、僕はそれを見て「そんなに売れなくてもやっていけるよね」と思っていて。それで実際に、CDの売上が半分だったり、3分の1でもアーティストが存続できるような形を作ってきたんです。そうじゃないと、「ジャズは3万枚も売れないからリリースできない」なんてことになるし、音楽という文化を継承していくのも難しくなっちゃうでしょ。
めちゃくちゃ売れなくても、好きな人がいるジャンルだったら存続させたい。そのためにいろいろと手を尽くしてきた部分はあります。CDをメインとした業態の方々が騒いでいるという感じで、事務所系の人たちと話していると、いうほど危機的な状況ではないと思いますけどね。
――「CD売上のハードルを下げても、事業として成立させる」というのは、レーベルの立ち上げ初期から実践されてきたことだと思いますが、そのために重要なポイントとは。
大谷:無駄をなくすことですね。レコード会社があって、事務所があって、出版社があって、アーティストがいる。そのなかで、例えば地方でキャンペーンを打つとなると、大名行列みたいに各社の担当者がゾロゾロ行くわけですよ。これが海外だったら、アーティスト自身が多くのことをこなして、補佐としてエージェントを雇っている感じ。バブルもあって、日本の音楽業界はいろいろふくらませ過ぎていた部分がありますよね。
特にCDバブルのころは、アーティストも「メーカーや事務所が全部やってくれる」と依存する体質になっていたところもあって。最近は若い子たちも賢くなって、自分でできることは自分でやろうとしている。それをどうサポートしていくか、というのは考えますね。業界全体としても、マネジメントの形が変わっていくんじゃないですか。アーティストを囲い込むような芸能事務所系のスタンスは減っていくと思います。
――アーティストが活動を継続していく手段はいくらでも考えられると。
大谷:考えられるし、音楽がなくならない以上、考えなきゃいけないですよね。淘汰されるなら音楽業界が本当にダメだということだから、それはそれで仕方がないなと(笑)。
――大谷さんがアーティストとの契約を決めるポイントとは?
大谷:何か突き抜けている部分があるかどうか。クレイジーだったり、人と違うところがないとダメだと思ってます。現場のマネージャーなんかは大変かもしれないですけど、アーティストなんだからそれでいいんだと。最近の子はまともですけどね。仕事をわかっている、というか。それは飲食のスタッフも同じで、少し寂しい部分でもあって。基本的に自主性に任せるので、「やりたい」といえる人がいいんですよ。10~15年前だったら、トンチンカンなことでも「これがやりたい!」というやつが多かった気がするんですけど、いまは少ないですね。元気な人を重用していかないと、世の中は元気にならないと思うし、どこの街に行っても同じような店ばかりじゃつまらないでしょ。そういう意味で、うちは特殊なアーティスト、特殊な店を出したいと思ってますけどね。
――今後、エル・ディー・アンド・ケイはどんな会社を目指しますか。
大谷:いまの感じでずっといければいいと思います。渋谷に特化している部分があるので、街づくりというのも意識していきたいなと。たまに“渋谷の王様”なんて言われるけど、うちはチェーン店じゃないから目立っているだけで、もっと渋谷で大きな展開をしている会社はあるんです。でも、そうした会社よりも、街づくりには貢献できると思っています。
音楽については、特に「うちらは“どメジャー”じゃないよね」と自覚しているアーティストたちにとって、確固たるポジションを築いていきたいですね。レーベルとして、そういうブランドは強化していきたいなと。
(取材:神谷弘一/撮影:竹内洋平/取材協力:Cafe BOHEMIA)
■LD&K official HP http://www.ldandk.com/
■Cafe BOHEMIA
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