「これまでは自分の中のエゴイズムが満たされるかどうかを判断基準にしていた」（成田）

――ちょうど話に上がった詞の部分について質問です。大胡田さんが書く詞にはいつも面白い言葉遊びが入っていますが、今回は現在のパスピエについて言及したような一節がありますよね？　「アジアン」～「誰？」の流れは、言葉がはっきり聴こえるようにあえてしているような印象を受けました。

大胡田：詞を書きながら「これは、インタビューの場で言及されるかもな」って思ってました…。「深読みとかされるかもしれないな…」って（笑）。でも歌詞ってそういう風にとらえる方もいるでしょうし、「これは自分のことだ！」とか「これはもしかしたら…。」みたいなのもあるかも知れないですし。「多面性」の一つとして納得してもらえればいいなと思っています。深層心理というか、自分の内側でそういうことがあったのかもしれないんですけどね。今の自分たちの立ち位置などに対する思いが自分の中にあったのかもしれないなと。

――深層心理ということは、何か過去の体験や思いが表れていると思うのですが、アルバムの制作にあたって、影響を与えた出来事などはあるのでしょうか？

大胡田：初めてのワンマンライブが全部終わって、「これで終わりというわけではない、まだ途中のことなんだ。また、これからも続いていくけど色々新しいことがしたいな」って思ってた時期でしたね。あとは『とおりゃんせ』を録音した時期くらいから、耳に入ってくるいろんな「音」が気になるようになっていて。自分がそういうモードだったので、バンドの音を聴いて歌詞を書いたんです。今までは歌詞を別で書いて、バンドで合わせてから「どうしようか」と考えてたんですけど、今回は演奏の中にいながら考えたというか。浮かんできた言葉を持ち帰って書き上げたりということをよくしていましたね。

――つまり今回の作品は、音に引っ張られて出来た詞だと。

大胡田：それはすごく大きかったです。音から考えると、歌い方もそうなんですけど、色とか景色が浮かぶことがすごく多くて。あとは長い名作漫画ってあるじゃないですか。そもそも漫画をあまり読まなかったんですけど、『カイジ』のシリーズとか『ジョジョの奇妙な冒険』とか。そういう漫画を読んだりしましたね。ストーリー性みたいなものを自分の中に取り入れようと思って。絵も描いていることですし、良いヒントがあったらいいなと。

――成田さんはなにか影響を受けたものはありますか？

成田：僕は、自分の音楽を世の中に向けて発信するにあたって、「これは絶対いい。これを出すことで何か面白いことが出来るかもしれない」と感じて自分の中のエゴイズムが満たされるかどうかを判断基準にしていたんです。でも、去年一年の活動を通して、ワンマンライブに大勢の方が来てくれたり、CDを聴いた反応を教えてくれて、自分の欲求を満たしたものをしっかりと受け入れてくれるんだっていうのをちゃんと実感できたことが作品に出ていると思います。これまでの作品すべてというわけではないですが、内向きだったのが外向きになったというとわかりやすいかもしれません。だからこそ、リスナーの期待に応えつつ、良い意味で裏切れるようなものを作り続けていかないとなって思います。

――アートワークで「次はこういうことがしたい」というものはありますか？

大胡田：私、一筆目を描くまではあまり考えないんですよね。今回もアルバム全曲そろってから下書きを始めたんです。その時の気分や印象で変わるので、今回は今までの流れをやめて、アルバムの内容に寄っていくテーマにして、バラエティ感を意識して。とりあえずジャケットの真ん中の人を描き始めたんですけど、ここから広げていくイメージをどうしようと思って…。「オリエンタル」や「アジア」というワードから、曼荼羅を意識して描いたんです。なので、基本的には描きながら見つけていく方が多いかもしれません。今年は浮世絵が好きだったので、それっぽい絵にしようとは思ってたんですけど。また試したいことがあれば変わっていくでしょうけどね（笑）。

――それは詞においても？

大胡田：いえ、歌詞は昔から考えてること、思ってることを外に出している部分が大きいので、そこは変わらないかもしれないですね。書き方とかは変わるかもしれないですけど。

（取材・文＝中村拓海）

■リリース情報
『幕の内ISM』
発売：2014年6月18日（水）
価格：初回限定盤（CD+DVD） ￥2,778（本体）＋税
　　　通常盤（CDのみ）　￥2,300（本体）＋税
※初回限定盤は特殊パッケージ仕様

＜収録内容＞
幕の内盤（DISC1）
01. YES／NO
02. トーキョーシティ・アンダーグラウンド
03. 七色の少年
04. あの青と青と青
05. ノルマンディー
06. 世紀末ガール
07. とおりゃんせ
08. MATATABISTEP
09. アジアン
10. 誰？
11. わすれもの
12. 瞑想

幕の外盤（DISC2）※初回限定盤特典 DVD
『パスピエ TOUR 2013 ”印象・日の出外伝”at AKASAKA BLITZ （2013.12.21）』
1. OPENING ～ S.S
2. デモクラシークレット
3. トロイメライ
4. 名前のない鳥
5. とおりゃんせ
6. フィーバー