1stフルアルバム『種の起源』インタビュー

「恋愛もバンドも、3回出会ったら運命」空想委員会・三浦が語る“観客ゼロ”からのメジャーデビュー

 

 6月4日にアルバム『種の起源』でキングレコードよりメジャーデビューを果たす、新鋭ギターロックバンド・空想委員会。キレのある演奏でライブ動員を飛躍的に伸ばす一方、自らを”低恋愛偏差値バンド”と称し、恋愛におけるモヤモヤを詰め込んだ歌詞でも幅広い層のファンから共感を集めている。今回リアルサウンドでは、同バンドのフロントマンを務める三浦隆一にインタビューを実施。独自の恋愛観を反映させたアルバム『種の起源』の成り立ちを中心に、観客ゼロも経験したというインディーズ時代の話から、自分たちの音楽を多くのリスナーに届けるための工夫まで、大いに語ってもらった。

「『自分の音楽には需要がないんだな』と思った」

――6月4日発売の『種の起源』は、これまでの空想委員会らしいライブ感のある曲に加え、サウンド、歌詞ともに新たな試みも盛り込まれた作品ですね。まず、どんな作品を作ろうと考えましたか。

三浦:テーマを特に決めていたわけではないんですが、デモ曲を100曲くらい用意して、その中から今聴いて欲しい11曲を選びました。その結果、今までの空想委員会と新しい空想委員会とが混在するアルバムになりました。タイトルは”ここからさらに色濃くなっていく進化の最初の部分”という意味です。

――今までの空想委員会の強みとは?

三浦:音楽を始めるきっかけが「恋愛におけるモヤモヤした部分を吐き出したい」ということだったので、今回も自分たちの強みとして、自然と歌詞に出ています。変化した部分は、恋愛だけではなく、日常における自分の「下手さ」を歌えるようになったことですね。

 たとえば、「カオス力学」がその例に当てはまると思います。こういう強いメッセージ性の曲は、「自分はそういうことを言える立場じゃない」と思って歌えなかったので...。

――「低恋愛偏差値」というのが三浦さんのキャッチフレーズでもありますけど、恋愛以外のメッセージ的な部分が出てきたということですね。

三浦:聴いてくださる方の中には、僕より年下の方も多いので、先輩という意味で(笑)。「こういうことも言いたいな」という気持ちが最近出てきたので作りました。あと、サウンド面では、「ラブトレーダー」という曲で鍵盤を入れたのは大きいですね。今までメンバー3人とドラムで出来ることだけしかやらなかったんですけど、この曲ではもう少し自由に、僕がギターを弾かなくてもいい、と柔軟にできるようになりました。

――なるほど。今回は初登場ということで、三浦さんの創作スタンスを伺いたいと思います。少し引いた位置から相手や自分自身を観察するような恋愛観や物の見方は、ご自身で歌詞を作るうちに出来てきたもの?

三浦:自分では特に俯瞰してみていると感じたことはなかったですけど、周りの人に言われて気づきました(笑)。そうしないと気に入られない、相手と自分との関係をちゃんと見てわかっていないといけない、という思いがあるので、ちょっと離れて見てバランスを図るようになったのかもしれません。元々は自分の独り言を吐き出す手段として、音楽があったんですけれど、段々と共感してくれる方が増えてきて「世の中にはモヤモヤしている人がけっこういるんだな」と最近は感じるようになりました。

――ではバンドで曲を作って発表するまでは、わりと1人でモヤモヤしていたんですか?

三浦:そうですね。完全に需要がない音楽だと思っていたので。今のメンバーになるちょっと前、2009年の年末には、お客さんがゼロの状態でライブをやったことがあるんです。そのときに「自分の音楽には需要がないんだな」と思ったので、今の状況は本当にありがたいですね。

――2010年以降は急速にファンを拡大していった空想委員会ですが、その方法として一番効果的だったのはライブでしょうか。

三浦:お客さんに届ける方法と、「届いた後どうつながっていくか」ということはけっこう考えましたね。今までは「ライブで良い曲を演奏すれば、CDは売れるしファンも増える」と勝手に思ってたんですけど、全然そんなことはなくて。ライブの前に1回出会っていて、会場に来ていただいて、その後ネットでも何でもまた違うところで会う、という風に。「3回出会ったら運命」って恋愛で言うじゃないですか? バンドも一緒だなって。

――なるほど。ライブ会場で一回すれ違っただけじゃ駄目なんですね(笑)。

三浦:ライブで見ていただいたら、次はまたどこかでつながれるように、と意識はしていました。今はネットがあることで、ライブで気になったらお客さんの方から検索をかけてくれる時代になりました。そうしてネットで見つけてくれたときに、HPがあって、MVがあって、と辿り着く場所があることは大事だと、インディーズ時代に思いました。

――そう思ったきっかけは?

三浦:2009年頃はあまり努力をせず、ズルズル音楽をやっていたんです。で、ちゃんとやってなかったから、(音楽を)やめられなかったんですね。僕以外のメンバーが辞めたときに「次を本気でやって、駄目ならもうやめよう」と決意しました。やめるために本気でやる、という感じで。「俺はまだ本気じゃないから」と先延ばしにしてきたものを、一度けじめをつけるために、佐々木と岡田にお願いして一緒にやりました。駄目だったらもうやめよう、と。

――崖っぷち、という状況に自ら追い込んだんですね。

三浦:僕は普通に仕事をしながら音楽をやっていた過去があって、佐々木と岡田に入ってもらうタイミングで仕事を辞めて、1年くらい無収入で、貯金が尽きたら終わり、という状況でバンドだけやっていた時期もありました。ただ、その1年でインディーズデビューの話が進んだので、いまだに続けていられているというわけです。

関連記事