アナ雪「Let It Go」ヒットから探る、歴代ディズニーアニメ主題歌の共通点

 ディズニーアニメともなると、ポップミュージック界の大御所も喜んで駆けつけるようで、1994年の『ライオン・キング』にはエルトン・ジョン、98年公開の『ムーラン』でスティービー・ワンダーやクリスティーナ・アギレラ、99年の『ターザン』ではフィル・コリンズと錚々たるメンバーが参加している。極めつけは12年公開の『シュガー・ラッシュ』(日本公開は13年)で、なんとAKB48(アウル・シティー「When Can I See You Again?」と2本立て)をエンディングテーマに起用した。
 
 ディズニーアニメ映画のドラマはミュージカル形式で語られるものが多く、一般の映画作品よりも音楽の重要度は高いと思われる。キャラクターの心情を歌にしていたり、ストーリーをそのまま楽曲で補完していたりする点からもそれは明らか。劇中で流れる音楽はストーリーの感動と一緒に観客の心に刻まれる。その曲を聴いただけで名シーンが思い浮かぶような体験をさせることも、ある種の狙いではないかと思うのだ。一方で、昨今の日本映画などを見ると、主題歌と言うとタイアップが多く、友情の物語なのに、主題歌は恋の歌などとチグハグになってしまうことも少なくはない。ディズニーアニメ映画が77年にわたる歴史の中で変わらずに追求してきたのは、あくまでストーリーをより印象付けるための楽曲作り。曲だけ売れて映画は失敗(またはその逆)が少ないことが、戦略を物語っている。『アナ雪』の「Let It Go」のヒットも、この方式によるもの。作品が持つ芳醇な世界観を1つの曲で表現する。もっと言えば、主題歌が作品そのものと同意義ともなり得る。そんな主題歌の本分をまっとうした楽曲であることが求められているのだろう。

※筆者注:今回はウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編作品に対象をしぼって執筆しました。

(文=板橋不死子)

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