「YMOは世界最高のダンスバンドだった」矢野顕子『ARTiST』で80年代のエピソード明かす

 後半では、矢野が演奏可能なピアノがある場所に出向き、コンサートを行う企画である「出前コンサート」について語った。この企画を始めたきっかけについて、矢野は「昔はレコードが出るとツアーをやっていたけど、例えば東京と名古屋をやったとして、『その間の人たちはどうなるの?』ってなって。電車から見えるあの丘の上の人は、矢野顕子の歌を知らないだろう。コンサートに来るにもお泊まりしてこなきゃいけない。『だったらこっちから行けば良いんだ!』となった」と明かし、それを糸井重里が「出前コンサート」と名付けたという。公演をする場所について、矢野は「沖縄そば屋の二階とか、古い公民館とか」と、様々な場所の名前を挙げた。地方では古いピアノを触ることも多く、古いピアノを開けたら、中から虫が出てきて、その虫が鍵盤を食べてたこともあったとか。

 トークの最後では、矢野が現在住んでいるニューヨークの魅力について「モノを作らせる魅力がある街」だと語った。世界中から色んな人がいいものを作りにやってくるので、それを見ていると自分の創作意欲も高まってくるのだとか。このことについて矢野は「日本で大御所だとか、そんなことはどうでも良い、まっさらな状態からスタート出来て、その作ったもので判断されるのが好き」と、日本よりも作品重視でその人間を判断してくれるニューヨークに、居心地の良さを感じていることを語った。

 番組最後のライブでは、こちらもニューアルバム『飛ばしていくよ』の中から、タイトルトラックである「飛ばしていくよ」を披露。同曲は、アップテンポな曲調と、エネルギッシュで感情的な矢野の歌唱が混ざり合った、疾走感あふれるナンバーで、最新型の矢野顕子を余すところなく見せてくれた。
 
 キャリアを重ねた今も鮮烈な才能を感じさせる矢野顕子の、気さくな一面が垣間見ることができた今回の『ARTiST』。番組は今回で最終回となってしまったが、アーティストの人間性や、曲に込められた魅力を引き出してくれる、数少ない番組だっただけに、惜しまれつつの放送終了となった。

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