嵐・相葉雅紀はなぜ人を惹きつける? 技術論を超えた「すごさ」を分析
天然であるがゆえ相葉の持つ性格、人間性みたいなものは彼の歌にもストレートに表れている。ギミックや小手先のテクニックがない分ありのままの姿で聴こえてくるのだ。ちょっと歌の巧い人間なら「ここでファルセットを使えば小綺麗になる」とか「ヴィブラートを入れれば感動的に聴こえる」みたいなことを大抵考えるものである(決してそれが悪いことと言っているのではない)。しかし相葉の場合は普段と変わらない地声でとにかく一所懸命、心を込めて歌うことだけに注力しているのが聴いていてすぐにわかる。飾りないことで「相葉雅紀」という人間のむき出しになった姿が真っ直ぐに伝わってくるのだ。
彼のソロ曲のなかでも人気なのが2007年リリース『Time』の初回限定盤に収録された「FriendShip」。「どれぐらいの奇跡が重なってさ/僕らはこうやってさ/出会えたんだろう?」「運命的な五叉路/一つに繋がり/続いていく」と嵐の友情を歌ったこの曲は元々、相葉が曲作りを担当した阿部祐也に「僕が嵐をどう思ってるか理解してくれてる阿部くんに曲作りをお願いした」ことで生まれたもの。ジャニーズの中でもとかく仲が良いことで知られる嵐の絆を、メンバーのひとりである相葉が純粋な心で歌ったなんとも心温まる一曲だ。他のメンバーもこの曲に対する想いは強く、二宮和也は『Time』の中でも最も好きな曲として(自身のソロ曲「虹」を差し置いて)「FriendShip」を挙げている。
最新アルバム『LOVE』(2013年)にも相葉のソロ曲は収録されている。12曲目の「夜空への手紙」がそうだ。これまでのものとは少し毛色の違うこの楽曲で相葉は「自分の育ってきた街の風景やそこにあるいろんな思い出、育ててくれた人への想いを形にしたかった」という。レコーディングを振り返り「歌詞に込めてる気持ちとかが熱いんです。それが熱くなりすぎないように注意しながら歌いました」と語る相葉。今は亡き大切な人(それがおじいちゃんであると後にラジオで語っている)へ「たくさんの愛を/優しさを/ありがとう」と感謝を歌うその姿は感動的であり、30歳を迎えて少し大人になった彼の「純粋さ」と「成長」がマッチした、これからの相葉雅紀をさらに楽しみにさせるような一曲となっている。
数あるアイドルのなかでも相葉雅紀 は一際まっすぐな人なのだろう。アイドルに限らず芸能の世界に身を置けば、誰もが自分を作って「演じる」ようになる。しかし相葉にはそういったところが感じられない。純朴で素直な彼の人柄、そしてそれを包み隠さず振る舞うところに彼の一番の「すごさ」があるのではないだろうか。
(文=北濱信哉)