KANA-BOON、ヒトリエ……ライブシーンで台頭する“高速テンポ”バンドたち

 続けて、人間的な魅力もこのバンドにはあると柴氏は語る。

「ボーカルの谷口鮪は、中学の卒業文集で『17歳の時にインディーズデビューして、20歳でメジャーデビューする』と、夢を言葉にしています。今もインタビューやライヴのMCでは『もっと上にいきたい』『大きな存在になりたい』というようなことを言うことが多く、明確に『成り上がり』を意識していることが伺えます。目標を言葉にし、それをちゃんと信じてきて、しかも実現させる才能を持っている。そういう意味では、サッカー選手で現在はイタリアのACミランにいる本田圭佑と同じ様なパーソナリティー、スター性を感じます。それでいて、尊大なところは一切ない。自分たちのことを“イケてない”と言うし、だからこそ共感を得ていると言う。大阪出身らしい人懐っこいユーモアもある。曲調が似たバンドは沢山いますが、こういうキャラクターや人間性の部分は大きな違いでしょう」

 フロントマンにカリスマ性があるのは、売れるバンドが絶対的に持っている条件ではあるが、KANA-BOONのスター性は、ありのままの若者として、ファンの立場に近く親しみが持てるものでもある。つまり、彼らにとってKANA-BOONという存在は、目をキラキラさせて見る、「手の届きそうなヒーロー」なのかもしれない。

 彼らの他にも、高速テンポや転調を巧みに操り、キャッチ―な曲を作り続ける、才能があるバンドたちは存在する。最近10~20代中心に支持を集めているヒトリエ、THE ORAL CIGARETTES、QOOLAND、コンテンポラリーな生活などがそうだ。ときには「曲が速すぎてついていけない」などの声もあるが、それでも折れずに自分たちの音楽性を突き通すことに期待したい。
(文=編集部)

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