成熟期を迎えた「JPOPラップ」 スパイス的扱いからクオリティ重視へ

 そして現在、さらに様相は変わってきている。AAAの日高光啓はソロ名義でSKY-HIと名乗り、母体活動のかたわらクラブでラップのスキルを磨いてきたのは有名な話で、アンダーグラウンドで活躍するMCやトラックメイカーとの親交も深く、客演作品も多数にのぼる。元KAT-TUNの田中聖もヒップホップを愛し、DABOやZeebraなどと縁があったことで知られていた。またアイドル・シーンに目を向けても、2010年代に入り、ライムベリーやlyrical schoolといったラップ専門のアイドルグループも生まれてきていることに加え、昨年リリースされたももいろクローバーZのセカンド・アルバム『5TH DIMENSION』に収録された「5 The POWER」には、いとうせいこうが作詞、MUROが作曲とアレンジで参加し、これまでのアイドル・ラップとは一線を画すプロダクションとして話題になったのは記憶に新しい。

 つまりバックグラウンドとしてヒップホップに自然と慣れ親しんだアーティストの増加と、“プロ”の参入による本格化の傾向が顕著になってきている。アイドルやJPOPでみられるラップのクオリティが確実に向上してきているのは、日本のヒップホップ・カルチャーを培ったきた先人による賜物であり、しっかりと高水準のものを示してきた証拠とも言える。

  先日配信された「文化系女子ラッパーの新しさとは?」記事にも顕著なように、シーンの多様化や『BAZOOKA!!! 高校生ラップ選手権』で見られるラッパーの低年齢化、2012年度から中学校で必修科目となったダンスなど様々な要因を考えると、日本で一般的に知られるラップはどんどん成熟期へと近づいているのかもしれない。
(文=中西英雄)

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